上写真=アジアの先の世界へ。宝田沙織は目の前の試合とその向こうにある世界を見据える(写真◎山口高明)
「落ち着いてプレーできた」
「チームがやるべきことを共有しながら、アジア大会だけではなく今後のワールドカップに向けてやっていこうと認識しています」
宝田沙織がチーム全員の気持ちを代弁した。2023年にオーストラリアとニュージーランドで共催される女子ワールドカップ、その予選を兼ねた女子アジアカップが1月下旬にスタートする。ワールドカップ出場権獲得、アジアカップ3連覇と2つの大きな目標を達成するために、より高い場所を意識しながらプレーすることの重要性を明かした。
昨年10月に池田太監督体制になり、11月にオランダ遠征へ。FW、センターバックでプレーすることの多かった宝田は、初戦のアイスランド戦に出場して、左サイドバックとして90+2分までピッチに立った。
「代表では初めてサイドバックでプレーしました。強さや速さにまだ対応できていないので修正していきたいですが、自分で仕掛けるスピードや技術の部分では相手を少し上回って、落ち着いてプレーできたと思っています」
アメリカのワシントン・スピリッツに所属して、フィジカル勝負には慣れていったが、なかなか出場機会を得られずに、この1月にスウェーデンのリンシェピングに移籍。
「レベルの高いアメリカに移籍して、なかなかチャンスがなくて全然試合に絡んでいませんでした。試合に出て成長したい思いがあったので、チャンスがもらえるスウェーデンのチームに移籍しようと決めました」
ピッチでもまれて大きくなるための決断だ。それは日本代表でも同じだろう。アイスランド戦では自分のサイドの裏のスペースを突かれて失点しており、反省点は残る。
「最終ラインなので、一発で行ったり簡単に抜かれることは一番やってはいけない。難しいところですけど、最終ラインとして自分が奪いやすくなるような声掛けを意識しながらやっています」
奪う、という守備のコンセプトによって、前に前に、のイメージが強調されるが、それだけが「奪う」ではない。
「サッカーでは奪うところがキーになっていて、一人で奪えればもちろんいいですけど、全体で連動しながら奪って攻撃につなげることでゴールにつながっていくと思います。まずは個人でしっかり奪えるように、距離感やタイミングを考えながらやっています」
オランダ遠征では単独でのボール奪取も、グループで奪いに出ることも、どちらもピッチで表現できた場面もある。それをアジア女王を決める大会で、さらにブラッシュアップさせる必要がある。
「結果にこだわって優勝することが一番です。その上で、試合内容で次につながるところを意識して一戦一戦を戦いたいと思います」
中2日で戦う短期決戦のアジアカップでは、さまざまなポジションをこなせる宝田の柔軟性が物を言うはず。なでしこ随一のマルチローラーが、存在感を示すときだ。