上写真=小泉佳穂は完敗を認めたが、糧にするつもりだ(写真◎桜井ひとし)
■2025年11月1日 ルヴァン杯決勝(観衆:62,466人@国立)
柏 1-3 広島
得点:(柏)細谷真大
(広)荒木隼人、東俊希、ジャーメイン良
「回答を持ち合わせていなかった」
「いや、まあ、完敗っすね。実力で負けたなと思います」
リカルド・ロドリゲス監督のスタイルを体現する、柏レイソルのメーンキャスト、小泉佳穂も脱帽するしかなかった。前半のうちにサンフレッチェ広島にセットプレーから3ゴールを許し、81分に細谷真大が1点を返したものの1-3で敗れてタイトルを逃した。
失点はすべてセットプレーから。ロングスローからの2点に加え、FKを直接決められた。
「してやられたというか、見事でしたね。3つとも見事なセットプレーで、自分たちのウィークを確実に突いていたと思います」
広島はロングスローからの得点の確率を上げるために、GK小島亨介の前に佐々木翔と東俊希を並べて立たせた。これを壁にして小島の行動範囲を極端に限定してきた。GKが出てくることができなければ、制空権は身長とジャンプ力に勝るほうがつかめることになる。
「相手は自分たちのことを相当研究してきて、自分たちのウィークポイントを突いてきたし、自分たちのストロングを出させないような戦いにしてきたと思っています。ロングスローもしっかり狙われたものだったし、それに対しての回答を自分たちで持ち合わせていなかった」
カップファイナルという舞台で、自分たちの特徴をあますところなく発揮して結果を手にする。広島の冷徹な勝負強さをまざまざと見せつけられ、対抗するすべがなかった。
ロングスローという局所的な事象に対する反省はもちろん必要だが、総論的に見れば、柏がやりたかったこと──いつものようにボールを動かして穴を開けること──をことごとく消された事実のほうが重いかもしれない。
「ビルドアップのところに相手がハイプレッシャーで来て、そのプレッシャーに誘導されるまま長いボール蹴ってしまうとか、そういう細々とした個人戦術や技術、チームの戦術としても力が足りなかった」
ボールをテンポ良く動かす柏に対抗する側は、ボールの出しどころ、つまり「人」を狙い撃ちするのが効果的だ。その強度は高ければ高いほどいい。広島はマンツーマンディフェンスでまさしく人で人をつぶしにきた。それに負けたと小泉は唇を噛んだ。
だから、自分への反省はどんどん細部に渡っていき、深くえぐっていく。
「もう少し前でボールに関われたらよかったなとは思っていたんですけど、有効な形で前進ができなかったので、どうしても前進するほうにエネルギーを割く形になった前半が悔やまれます」
「マンツーマンでマークに来る形で、ボールが前進していかなかったので、まずはボールを前に進めて相手のコートでプレーすることのほうがプライオリティーが高いと思って。前進するためのタスクをできる選手が自分だったので、そういうタスクをこなす必要があったと思ってました」
後ろからボールをピックアップするためにポジションを下げ、あるいはマンツーマンでついてくる相手を外すために立ち位置を動かす作業を繰り返した。だが、それでもなかなか前に進めなくなった。
「あとは、難しかったですけど、相手がハイプレスで来るからこそ、そのハイプレスをはがした後にどうしてもスピードアップしすぎてしまった。押し込んでからのボールポゼッションができずにアップテンポな試合になってしまったところは、自分たちの拙さが出たなと思います」
深くまで運んでから、変幻自在にコンビネーションで破るのが、今季の柏の真骨頂。だが、急ぎすぎたことでそれができなくなった。自分自身の判断のズレも原因だったと振り返る。
「ボールを前進させるところでも、相手がプレッシャーに来てくれたらはがせることや、その逆を取ることは上手だけど、いざ、自分がフリーになっていて、自分以外の選手がプレッシャーを受けている状態のときに自分がボールを回しすぎちゃうとか、そういう細々としたところですね」
カップファイナルでの完敗に後悔と反省は尽きないが、それでも、ただやられっぱなしだったわけではない。3点のビハインドを負っている危機的状況にあっても「3点は45分あったら返せると思っていたんです」という自負を失わなかった。
その事実が、J1で逆転優勝を達成するための光になるだろう。ルヴァンカップのタイトルは目前で失ったが、残り3試合へ向けてその自尊心まで失う必要はない。
