上写真=中野就斗はロングスローだけではなく、攻守に高い集中力を保って勝利に貢献した(写真◎高野 徹)
■2025年11月1日 ルヴァン杯決勝(観衆:62,466人@国立)
柏 1-3 広島
得点:(柏)細谷真大
(広)荒木隼人、東俊希、ジャーメイン良
2点とも「狙い通り」
「いや、僕だと思ってました」
MVPは、そう思った中野就斗ではなく、先制点を挙げた荒木隼人が選ばれた。
「いまのはウソですよ!」
中野は即座に否定して笑わせたが、間違いなくMVP級の活躍である。右サイドからのロングスローで2ゴールを導いたのだから。
25分、ニアに届けたロングスローに荒木隼人が飛び込んで、ヘッドで決めて先制に成功する。
「隼人くんが、1回目に投げたときに競り勝てるっていう自信があったらしくて、そのまま投げてこい、ということで投げたらいい感じで入ってきてくれたので、狙い通りですね」
38分に東俊希がFKを直接決めて2-0とすると、次は45+2分。またもやニアポスト付近にロングスローを投げ込むと、佐々木翔がヘッドで中央へ流して逆サイドでジャーメイン良が左足ボレーで決めきった。
「キーパーも警戒していたので、翔くんがキーパーをブロックしながらニアで触れるかなと。本当にすごい折り返しをして得点につながったので、自分の中では狙い通りでした」
どちらも佐々木と東が柏レイソルのGK小島亨介の前に立ってスペースを埋め、そこに正確に投げ入れた。ロングスロー作戦、大成功である。

3点目は中野就斗のロングスローを佐々木翔がヘッドでつないで生まれた(写真◎桜井ひとし)
「精度があるので、守備側としては守りづらさがありますし、中には(空中戦に)強い選手ばかりがいるので、脅威のあるセットプレーだと思ってます」
遠くに正確にボールを投げ入れることができる選手がいるからこそできる戦術だが、中野は「小学生のときは野球選手を目指していました」と言うほど肩に自信があった。ただ、4月に肩を痛めてしばらく投げられなかったという。
「ちょっと途中で肩を痛めてしまって、そこからなかなか距離が出なかったんですけど、このためにしっかりとケアをしてきました。今日、こうして得点につながったことは良かったなと」
サッカー選手が肩のコンディション調整に腐心する、というのもなかなか聞かないが、「固まっている部分があって、しっかりほぐしながら、あとは強度を出すためにしっかりとトレーニングに励みました」と調整は完璧だった。
3点をリードした後半は、柏がパワーを出してくるのは自明の理。「守りに入ったら絶対に失点してしまう」と警戒心をもう一度高めた。対面の小屋松知哉は柏のキーマン。ポジションを次々に変えて惑わそうとする小屋松にどこまでもついていく徹底的なマンツーマンディフェンスで、柏の攻撃を分断した。
1点は失ったものの、「前からアグレッシブに、うちらしいサッカーをしよう」と声を掛け合って最後まで集中した。そうして手にした、自身初の3大タイトル。
「僕が加入してからはまだタイトルがなかったので、自分自身が成長させてもらった恩返しができていなくて、今日、こうしてタイトルを取ることができて良かったです」
まだ一つ目。この優勝でパワーアップした中野は、J1、天皇杯、ALCEと残る3つの大会をまだまだ戦い抜くつもりだ。
