舞行龍ジェームズにとっては、9年前の雪辱を果たした日になった。JリーグYBCルヴァンカップ準決勝で、アルビレックス新潟は川崎フロンターレに連勝してクラブ史上初の決勝進出。2015年の準決勝で敗れ去った悔しさを、古巣にぶつけた気持ちのいい勝利だった。

上写真=エリソンと丁々発止の対決を繰り返した舞行龍ジェームズ。守備のリーダーだ(写真◎J.LEAGUE)

■2024年10月13日 ルヴァンカップ準決勝第2戦(@U等々力/観衆21,159人)
川崎F 0-2 新潟
得点:(新)小見洋太、太田修介
※新潟が2勝で決勝進出

「でももうそのミスは関係ないから」

 2015年10月7日、当時のナビスコカップ準決勝第1戦でアルビレックス新潟はガンバ大阪にホームで2-1の勝利を収めた。ところが4日後の11日、アウェーゲームでは0-2。2試合合計2-3で敗退に追い込まれた。決勝への壁は厚かった。

 この2試合に出場した新潟の選手のうち、さらに9年後の2024年にルヴァンカップ準決勝の川崎フロンターレ戦にも出場したのは、舞行龍ジェームズだけだ。今度は自らの手で、ファイナルへの扉を堂々と開いた。

「特に雰囲気にのまれないことがすごく大事。実は(宮本)英治とかは特に緊張していて、最初に何回かミスをしたんだけど、でももうそのミスは関係ないから、みんなで切り替えてカバーしていこうという話をしました。それはうまくいったと思います」

 9年前と同じようにホームで先勝して臨んだアウェーゲーム。かつての経験を仲間に言葉で示して導いた。松橋力蔵監督が「守備のリーダー」と評した理由の一つが、この「声かけ」にある。ベンチスタートだったキャプテンの堀米悠斗に代わって、左腕に黒のキャプテンマークを巻いたのも当然だった。

「スタジアムに着いたときにキャプテンマークがロッカーに置いてあって、あれ、って」

 そこで初めて知ったのだが、気負いはなかったという。

「いつも通りでしたよ。いつも、後ろ(守備陣)のリーダーとしてしゃべったりしてきているから、大きな変わりはなかったですね」

 もう一つ、特別だったのは、古巣相手の勝利だったこと。

「あのころはケガで苦しんだ時期が長くて、サポーターの皆さんに活躍している姿をなかなか見せられませんでした。こうやって帰ってきて、決勝に進むことによって、ちょっとは恩返しができたかなって」

 2017年から2年半ほど、水色のユニフォームを身にまといながら、リーグ戦は3試合しかプレーできなかった。それでも、メンバー発表のときに盛大な拍手で迎えてくれた川崎Fのサポーターに感謝の言葉を届けた。

 キャプテンとして古巣対決を制し、クラブとして初めての決勝進出を成し遂げた。舞行龍にとって本当に特別な日になった。9年前にG大阪に行く手を遮られたときを振り返って「まだ若かった」と笑ったが、いまでは36歳の円熟を楽しみながらプレーすることができている。

「自分の人生で、こういうチャンスもなかなかないと思います。ここでしっかりと、最後にいい試合をして優勝したい」

 川崎Fの選手とサポーターの力も背中に感じながら、名古屋グランパスとのファイナルの舞台に挑む。


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