守備の改善には「細部の徹底を」
2つ目は「ケガ人が続出してしまったこと」。新加入選手が開幕前に離脱するケースが多く、開幕後も主力と目された選手が次々と戦列を離れた。
昨季に続いて湘南ベルマーレからの期限付き移籍でプレーしたMF新井光は、開幕から7試合連続で出場したのちに戦列を離れ、最終的に右足関節内果骨折で復帰することなくシーズン終了。プロ2年目のMF安藤一哉も開幕から9試合連続で出場したが、リーグ中断期間中の天皇杯で左ヒザに重傷を負い、やはり復帰することなくシーズンを終えた。
DF石井光輝も開幕から4試合連続出場後に負傷離脱し、復帰後に再び離脱して出場は8試合。MF魚里直哉は20試合に出場したものの、5月から6月にかけて長く戦列を離れた。「大きな痛手だった」と吉野氏が語った4選手以外にも、1~2週間や1カ月程度の離脱が相次ぎ、「スタメン選考などで本当に難しいシーズンになってしまった」と振り返った。
これについては金鍾成監督就任後、練習前に筋力トレーニングを行ない、フィジカルの向上を図っている。「ようやくシーズン終盤に、体の無理がきく、走れる、といった成果が出てきたので、引き続き継続してやっていきたい」との考えを示した。
3つ目に挙げたのは「メンタル面の弱さ、サッカー選手として自立していないこと」。シーズン終了後に各選手と面談を行なった吉野氏は、選手たちが「うまくいかなかったとき、どうしていいか分からなかった」「ネガティブな状態から抜け出せなかった」「引っ張ってくれる選手がいなかった」と言っていることに「違和感があり、現状のチームを物語っていると感じた」という。
吉野氏は、金鍾成監督がシーズン中に「まだまだ主導権がベンチにある」と言っていたと明かした上で、「ピッチ上で局面は目まぐるしく変わっていく。ピッチ上にいる選手たちが状況を判断し、思考して、決断して、実行していかなければならない」と指摘。「選手たちを成長させて、一人ひとりを充実させていかないと、そういう行動に移っていけないのではないか」と今後の課題を挙げた。
ただ、これについても終盤の3連勝の時期は変化が見られ、吉野氏は「試合に向かっていく姿勢が変わり、ハーフタイムのロッカールームでの選手たちの会話が具体的になっていった」とコメント。「自主的に、自分たちからやっていこう、というところが見られた。若い選手たちが所属している私たちにとっては、ここがカギになる部分ではないかと感じている。来季に向けても、しっかり改善していかなければいけない」と今後に目を向けた。
また、報道陣との質疑応答では、リーグワーストとなる53失点についても言及。「あまりにも『軽い』失点が多かった。最後のところの一歩など、細部の徹底はしっかりやらなければいけない」と語り、「昇格を目指していく上で失点数を減らすことは、すごく大事なこと。攻撃的にいくところを上積みすることに加えて、失点を減らさなければいけない」と目標を掲げた。
来季のJ3は、いわきFCがJFLから昇格し、松本山雅FC、ギラヴァンツ北九州、愛媛FC、SC相模原がJ2から降格してくる。「近年まれに見る過酷なリーグになることが予想される」とした吉野氏は、「現状の選手を維持し、今季の反省を生かして選手補強を行なって、来季はスタートダッシュを切れるように準備していきたい」と決意を新たにしていた。
取材・写真◎石倉利英