今季開幕戦で劇的な逆転勝利を収めたガイナーレ鳥取は、深い悲しみの中で戦いに臨んでいた。今季就任したスタッフが試合2日前に急逝。大きなショックを受けながらも、力を振り絞って勝ち点3をつかんだ。

上写真=後半アディショナルタイムの逆転ゴールに、ベンチの前で喜びの輪が広がる。髙木監督はスタンドで見ている吉野強化育成部長に向かってガッツポーズを見せた(写真◎J.LEAGUE)

「いまは何も考えられない」

 3月14日の明治安田生命J3リーグ開幕戦。鹿児島ユナイテッドFCとアウェーで対戦した鳥取は、開始直後の2分と後半立ち上がりの49分に失点し、0-2の劣勢を強いられていた。

 しかし、65分のDF石田侑資のゴールで反撃を開始すると、74分にはFW田口裕也が続いて同点。さらに後半アディショナルタイムの90+3分、MF新井光が逆転ゴールを決め、3-2の大逆転勝利となった。
 
 敵地での劇的な勝ち点3。それでも試合後の髙木理己監督に笑顔はなく、オンライン会見の冒頭で試合の感想を求められると、沈痛の面持ちで語った。

「我々クラブ全体にとって、今日の試合に臨むのが難しいことがあった。いまは何も考えられない、というのが正直な言葉です」

 会見時点では明らかにされていなかったが、クラブは深い悲しみに包まれていた。試合2日前の3月12日、コンディショニングトレーナーの宮川侑也(みやがわ・ゆうや)さんが病気のため、26歳の若さで急逝した。

 東海大浦安高の男子サッカー部、駒澤大の男子バスケットボール部、関東サッカーリーグの日立ビルシステムサッカー部で、それぞれトレーナー帯同として経験を積み、今季鳥取のコンディショニングトレーナーに就任したばかり。選手のウォーミングアップなどコンディショニング全般を担当し、プレシーズンのチームづくりを支えていた。

 チームは大きなショックを受けながらも鹿児島に向かい、劣勢をはね返して勝利を手にした。髙木監督は「人と人とのつながりでこそ、生み出されるものがあるのだと、今日あらためて選手たちから教えてもらった」と語り、「ヨレヨレになりながらでも、クラブとしての力を示すことができたことがすべてです。このクラブだからこそできるパワーの注ぎ方ができた。このクラブの監督でいられることを誇りに思います」と言葉をつないだ。


This article is a sponsored article by
''.