上写真=古長谷千博はテクニックをチームに組み込んで、今後の大きな可能性を示した(写真◎J.LEAGUE)
■2026年10月11日 J2第10節(観衆13,545人/@レモンS)
湘南 1-1 新潟
得点:(湘)奥埜博亮
(新)若月大和
「新潟に来て一番良かった」
古長谷千博が何者であるか。4試合ぶり3度目の先発メンバーとして迎えたこの試合で、その一端を示すことができたのではないだろうか。
ハイライトは後半開始早々の50分だ。
自陣で守り抜いたボールが足元に入ると、一気にハーフウェーラインを通り越すロングスルーパスを滑らせた。抜け出した若月大和がシュート、GK真田幸太に防がれたが、こぼれたところを改めて蹴り込んで、先制ゴールになった。
このパスを放ったのは右足のアウトサイド。絶妙の力を加えてボールに回転を与えているのだ。
「グラウンドも濡れていたし、インサイドで出していたら前に流れちゃうなと思って、アウトでかけたら回転して止まるので、大和ならあきらめず走ってくれるかなと」
しっかりと若月のアクションを視界に入れた上で、「相手も対応しきれてない感じだった」というところまで見極めての、テクニカルなパスだった。
ただ、本人の歯切れが悪いのは、別の「ハイライト」のせいだった。
9分、白井永地のパスを受けて左足を振った。34分、大西悠介のパスを左で受けてからカットインして右足で狙った。40分、カウンターからマテウス・モラエスのドリブルに左から並走して受けて、左足に置いてフィニッシュ。しかし、いずれもゴールにならなかった。
「ハットトリックできた。自分が3点決めていればもっと楽に試合を運べたし、ブル(大西)のレッドカードもなかったと思う。オレのせいっすね」
スタンドを唸らせるほどのスルーパスと、フイにした3つのビッグチャンス。「きれいなシュートを狙いすぎたかな」と嘆いて、失敗した事実の責任の重さを自分に突きつける。
「3本目を打ったあたりでスタンドのほうから『枠に入れてくれよ』みたいな声が聞こえたんです。もう本当にその通りだなと思ったし、枠に入れないと何も起こらない。地道にもっと頑張らないと…」
一方で、結果が出ていないという反省は大前提だとしても、自分にとってこの試合が未来を変える大きなきっかけになるかもしれないという予感もあるのだという。
「新潟に来て出た試合の中で一番良かったと思います。マイボールの時間がかなり長かったと思うんですけど、その要因として、自分のところで時間を作れて、味方の上がりを待てたことはプラスになったと思う。それができると示すことができた試合だと思う」
時間を作る上で、古長谷が駆使するのが、立ち足の後ろにボールを通す切れ味鋭い切り返しだ。
「そう、あれで時間を作ろうと思ってるんです。(切り返さずに)そのまま上げてしまうと味方も間に合っていないし、相手も普通にクリアできてしまう。ちょっとためれば、テツくん(左サイドバックの加藤徹也)やボランチの選手が上がってくるので、意識しています」
いわば必殺の切り返しだ。
左サイドハーフにはシマブク・カズヨシが入ることが多いが、彼はドリブラー。一方で古長谷はテクニックとセンスでパスを配り、フィニッシュも担うタイプだ。特徴の異なる選手が存在することで、チームの攻撃のバリエーションは自然と増えていく。
自らの存在をしっかりとピッチに刻み込んだアウェーゲーム。ただ残念なことに、あの素晴らしいパスにはアシストがつかなかった。若月が一度GKにシュートをぶつけてしまったからだ。
「ちょっと大和には言っておかないとな」
そう言ってニヤリと笑って、バスに乗り込んだ。
