明治安田J2・J3百年構想リーグでアルビレックス新潟は、WEST-Aグループの現在4位につける。3連勝を狙った富山戦では敗れたが、チームは『前進』を見せ始めた。センターバックの舩木翔も手応えをつかんでいる。

上写真=今治戦で手応えをつかんだと語った新潟の舩木翔(写真◎J.LEAGUE)

小野さんに頼るのではなく、考えることが大事

 チームの取り組み、積み重ね、変化は、「急成長」という形ではなかなか現れない。

 かつてアルビレックス新潟を率い、2007年にはこれまで過去最高となるJ1リーグで6位に導いた鈴木淳(監督在任期間は2006~2009年)は、日々のトレーニングを「薄い紙を、一枚ずつ重ねていくようなもの」と表現した。

 昨年、明治安田J1リーグ第20節・横浜FM戦の勝利(〇1-0)を最後に、19試合未勝利(5分け14敗)、最下位でJ2に降格した新潟は、今年、クラブOBでもある船越優蔵監督を迎え、チーム再建の途上にある。

 復活の道は、なだらかではない。J2、J3のチームが混在する明治安田J2・J3百年構想リーグのWEST-Aグループで13試合を戦い、新潟は現在4位。今大会初の3連勝を懸けて臨んだアウェーの第13節・富山戦は攻守で精彩を欠き、0-2で完敗。7連勝(うちPK戦1勝)とした首位・富山に、勢い、完成度の差をまざまざと見せつけられた。

 だが、チームは泥沼の中にとどまったまま、停滞しているわけではない。前進を感じ取る一人が、センターバックの舩木翔だ。

 昨年7月の新潟加入以来、初めてホームのデンカビッグスワンで“完全勝利”の喜びをチームメート、サポーターと味わったのが、特別大会第11節・FC今治戦だ。42分にマテウス モラエスが挙げたゴールが決勝点となり、1-0で完封勝利。すでに第9節のホーム、ツエーゲン金沢戦にPK戦で勝利してはいたものの、90分で勝ち切ったのは、昨年6月のJ1第20節・横浜FM戦以来、実に10カ月ぶりのことだ。

 ジェイソン ゲリアとセンターバックのコンビを組む舩木は、利き足の左足から繰り出される多彩なキックでプレーのテンポを作り出す。Mモラエスのゴールはジェイソンの縦パスが起点となったが、そこに至るまでの過程で今治を揺さぶり続け、相手のブロックにパスを差し込むスペースが生じるよう、ボール回しの舵(かじ)を取った。

「ホームで結果を出せず、最近の試合ではなかなか点も取れませんでした。自分たちでボールを保持しつつ、ああいうチャンスメークからゴールを決められたのは良かったと思います。自分たちで動かす時間が増えれば、それだけ自分たちの目指すサッカーを表現できる。そういうところが少し見えた試合になりました」

 今治戦は、7試合ぶりの90分での勝利だった。その間5得点と、1試合平均1点に及ばず。前節・高知ユナイテッド戦は試合開始早々の4分に先制したものの、ライン間でうまくボールを集配していた小野裕二が21分に負傷交代。すると32分、35分とCKから連続失点して1-2で逆転負けと、苦しい状況が続いていた。

「高知戦では小野さんのけがが、自分たちにとって本当に痛かった。抜群に気が利くというか、自分がいてほしいところにいてくれる選手なので(後に左内側半月板損傷で全治約4カ月の見込みと発表された)。

 でも小野さんだけに頼るのではなく、もっとみんなが考えながらサッカーをすることが大事だと思います。それが一人一人の成長にもつながるし。

 だからこそ、自分が思っている立ち位置にいないときは、自分から伝えることも大事だと思っているし、練習で積み重ねていきたい。試合でできるようになるために、まずは練習からです」

 高知戦で小野が退くまでの間、テンポよく最終ラインでボールを動かす舩木は、適宜、縦パスを差し込んでいた。チームのコンセンサスとプレーの共有がさらに深まり、勝点3に結びついたのが今治戦、続くFC大阪戦(第12節〇1-0)だ。

 今治戦のオフ明けのトレーニングでも、パススピード、テンポ、そしてラインブレイクを強調する船越優蔵監督の姿があった。

 チームの再構築は、確実に前進している。守備を整備し、高いレベルで安定化させるこれまでの段階から、ゴールを仕留める局面にいよいよ着手されたことが実感されるトレーニング風景だった。

「(ライン間で受けて)前を向く意識、気持ちが攻撃の選手たちに芽生えてきていると感じます。そのためにも、やっぱりパススピードは大事です。パススピードで剥がしながら相手のズレを見つけることは、監督も映像や言葉ですごく伝えてくれています。だから、みんな意識してできるようになっていると思います。

 でも、最後は個人技で剥がせるかどうか。だからこそ後ろの選手にできるのは、前の選手が少しでもいい状態で受けられる状況を逃さず、ボールを渡してあげることだけなんです。

 いくらパススピードが上がっても、後ろに重かったら全然意味がない。チームとして、どう前に行くのか、どうゴールを取るか。そのために後ろのパススピードを上げていければ。

 みんなの『勝ちたい』『もっと上に行きたい』という気持ちとこだわりが練習からどんどん表れているのは、とてもいいことです。積み上げていきます」

 最後、ゴールをこじ開ける個人の力を引き出すために。サポートのチームワークを、とことん追求する。一足飛びにチームは完成の域には至らないが、根気強く、丹念にパスをつなぎ続け、厳しく、タフに守り抜く。そこにセンターバックとしての矜持があり、そうすることが、さらなる勝利の喜びにつながる。道が、開かれようとしている。

取材・文◎大中裕二


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