上写真=前列右から3人目が鳥海晃司。昇格の約束を果たした(写真◎高野 徹)
■2025年12月13日 J1昇格プレーオフ決勝(観衆17,634人@フクアリ)
千葉 1-0 徳島
得点:(千)カルリーニョス・ジュニオ
「J1の舞台を捨ててきた」
2024年シーズンが終わったとき、鳥海晃司がセレッソ大阪との契約延長を断ってまで、古巣のジェフユナイテッド千葉に戻ることを決めた。J1復帰の力になるためだ。
その約束を果たした。
「達成感もありますけど、本当にJ1に戻りたいって思ったので、これでやっとスタートラインに立ったな、と」
アカデミーから育ち、プロデビューしたクラブが長くJ2で苦しんでいる。だから、自分でJ1に昇格させたい。その切実な思いをピッチにぶつけた。控えに回る時期もあったが、リーグ戦30試合、2526分の出場はチームで3番目に長い。
「1年間、長かったなっていう思いと、自分自身でJ1の舞台を捨ててきたので、これで上がれなかったらもしかしたら選択を間違ったんじゃないかと思う時期もありました。でも、そういう時期を乗り越えて、本当にやっと戻れるなっていうのが素直な気持ちです」
90+2分、日高大に代わってピッチに立つと5バックに変更して堅陣の一人となり、ゴールに襲いかかる徳島ヴォルティスの攻撃を食い止めた。
「ケガでコンディション的にも90分通して戦えないと思っていたけれど、そういう中でもベンチに入れてくれた。本当に監督にも感謝しています」
心の底から渇望していた昇格の喜びを、ピッチの上でかみ締めることができたのは、そのおかげだ。
J1のC大阪に残らずにJ2の千葉への復帰を決めたことを「サッカー選手としては変な決断をした」と表現する。だからこそ「一緒に乗り越えてくれた家族に本当にありがとうって言いたい」と特別な思いに昇華し、昇格決定の瞬間に涙がこぼれた。
自らの決断を信じたこの1年、チームに漂う空気を「危機感」と称した。
「危機感が強いチームでした。なぜ僕たちは勝ててきたのかというと、圧倒的な強さではなく、そういうものを感じてきたからだと思うんです」
自信が過信にならなかった。それがチームの結び付きを強めていく。
「危機感はものすごく感じていて、でも、みんなでまとまって、一体感を持ってできたことが大きかった」
自動昇格は逃すことになったが、J1昇格プレーオフではRB大宮アルディージャ戦は0-3からド派手な4-3の逆転勝利を収め、この徳島戦は1-0で確実に逃げ切った。この2試合だけでも、チームの力量の広さを物語っている。
さて、17年ぶりにJ1昇格を果たした「2025年のジェフユナイテッド千葉」とは、鳥海から見てどういうチームだったのだろう。
「犠牲心を持ってみんながプレーできるし、トレーニングを真面目にみんながこなしていると思います」
真面目なチームの中心で、真面目な鳥海が確かな存在感を放ち、真面目にJ1復帰の約束を果たして、そして涙した。
