上写真=髙橋壱晟が見事なアシスト。サイドバックとして花開いた(写真◎Getty Images)
■2025年12月13日 J1昇格プレーオフ決勝(観衆17,634人@フクアリ)
千葉 1-0 徳島
得点:(千)カルリーニョス・ジュニオ
「うまく合わせられました」
「やっとだな。うれしい、というよりも、やりきったって感じ」
J1昇格を告げるホイッスルが高々とフクアリに響いたとき、髙橋壱晟にはまずそんな思いが込み上げてきたという。そう思ってすぐに、涙がこぼれた。
「16年のうち、9年ジェフにいますからね、僕は」
レノファ山口、モンテディオ山形に期限付き移籍した期間も含めて、今年で9年目。「やっと」の一言は、その年月の長さと重みが込められた言葉だ。
変わったのは、この3年だと断言する。
「慶行さん(小林監督)になってからの3年は、本当にJ1でプレーできる可能性のあるチームになりました。だからこそ、この3年目で一番チームが成熟した状態で、J1に昇格するに値するチームだと証明できました」
髙橋は変貌の象徴的な存在である。小林監督によって、MFからサイドバックにコンバートされたのだ。そして、右サイドバックとして、J1昇格を決定づける決勝ゴールをアシストしてみせた。
69分、左サイドの石川大地からのサイドチェンジのパスを受けてドリブルで突進すると、タイミングを見計らって早めにクロスを送る。そこに飛び込んだカルリーニョス・ジュニオがヘッドでゴールへと送り込んだ。
「サイドに出すか、もうちょっと運ぼうか、とか、選択肢がいろいろあったんですけど、一番いいところにカルが走り込んでくれてたんで、うまく合わせられました」
青森山田高時代はプレーメーカーとして名を馳せたから、キックはお手のもの。ただ、プロの舞台で求められるサイドバックとしてのクロスの質はまた別ものだった。とにかく練習する3年間だった。それが、形になった。
「練習を続けたからこそだと思うし、もちろんシーズンの途中で出せていれば自動昇格もあったかもしれないですけど(笑)、それでも続けてきたことが出せたのでよかったです」
練習は、ウソをつかない。
もっと大人になる
小林慶行監督は昇格を手にした理由を説明する中で、この3年間を振り返って「積み上げ」という言葉を繰り返した。
髙橋もまさにその点を実感していた。
「毎年毎年アップデートしてきたと思いますけど、1年目はとにかく前へという姿勢が出ていて、2年目はそれをブレずにやり続けて強さのようなものが磨かれて、3年目でもっと大人になる。そういう感じでした」
小林監督のチームづくりによる効果は明確だった。
「チームが戸惑っているような時期もあったけれど、慶行さんになってすごく変わった。こんなにちゃんとチームになったことがなかった。ジェフにとって本当に充実した3年間です」
では、小林監督はどうやって「チーム」を作ったのか。就任した最初の日から昇格を決めたこの日まで、変わらなかったことがあると、髙橋は断言する。
「メンタルですね。慶行さんの成長し続けようとする、常に進化していこうとする姿勢は、最初から変わらなかったです」
「日頃からのトレーニングの質、選手の意識はずっとブレずに高かったと思います」
それは髙橋自身も同じで、サイドバックとして成長の日々だった。
こうして、髙橋は、ジェフユナイテッド千葉はJ1昇格を決めた。でももちろん、ここからが本番である。
