上写真=90+6分、染野唯月が右足に力を込めて「J1昇格ゴール」!(写真◎J.LEAGUE)
◾️2023年12月2日 J1昇格プレーオフ決勝(@国立/観衆53,264人)
東京V 1-1 清水
得点:(東)染野唯月
(清)チアゴ・サンタナ
「ファウルも自分で取ったし」
右サイドで中原輝が左足ですくい上げるようにして前線に送ったとき、染野唯月がするりと抜け出した。DFの頭を越えて足元に届いたボールを2つ前に運んで抜け出すと、左足を高橋祐治の右足にすくい上げられるようにして倒された。PK!
そのまま自らボールを持ってPKスポットへ。0-1のまま迎えたアディショナルタイムで、これを決めればJ1昇格が濃厚。しかし、失敗すれば…。「ファウルも自分で取ったし、自分でっていう感じでした」。迷いはなかった。
右足でしっかりボールを叩いて、ゴール右へ。GK大久保択生にコースは読まれていたが、パワーとスピードで上回った。90+6分、ついに同点に追いついた。J1昇格カウントダウンだ。
「自分が点を決めてJ1昇格する気持ちで蹴って、その結果、点になったのですごくうれしいです」
0-1で先制されたのは、キャプテンの森田晃樹がハンドで与えたPKだった。試合直後のインタビューで号泣するほど責任を感じていた森田からは、同点ゴールを決めて「本当にありがとう」と心からの感謝を伝えられたという。
「いろいろな責任感を背負ってきて、いろんな思いがあったと思うんです。そこは自分たちも一番理解してるところなので、本当にJ1に連れていけてよかったな、と」
森田への思慕をそう明かす。
鹿島アントラーズから昨季に続いて今季も夏に加入すると、それを合図にするようにチームも力強さを増した。レギュラーシーズンで3位の座をもぎ取り、プレーオフ準決勝でジェフユナイテッド千葉を下した。そして、この決勝でJ1を引き寄せる「昇格ゴール」。
ところで、PK獲得のシーンに至るあのパスの瞬間、中原とは「目が合った」という。清水が5バックにして重心を低く構えていたが、スペースが埋められたからこそ細かな動きの駆け引きで背後を狙い続けた。それが、あそこで実った。
「常に背後でプレーしようと狙っていたので、それがうまく自分のいい形に持っていけたのかなと思いました」
最後の最後で、自分の持ち味を発揮して、仲間を高みに導く。まさに職人芸である。