ミッドウィークに行われた12日のJ2第9節では、ここまで3連勝で5位につけるザスパクサツ群馬が、4勝4敗ながらホームでは4戦全勝の7位大宮アルディージャと対戦。結果は群馬が1-0で勝利を収め、4連勝を達成して4位に浮上した。

上写真=大宮戦で決勝ゴールをスコアした群馬の平松宗(写真◎J .LEAGUE)

主導権を握れなくても勝ち切った意味

 大きな勝利にも大槻毅監督は表情を緩めることがなかった。

「サポーターの皆さんには喜んで頂いて日曜日まではハッピーな気持ちでいてもらいたいと思います」としながらも「まだ9試合しか終わっていない段階で浮かれるようなこともないですし、今表層に見えているもので喜んでいますが、僕は今、見えない背景のような部分がどのような質のもので皆が集団としてできるのかという部分を作っているところだと思っています。42試合終わったときにどのようになるのか彼らとやっていきたいなという気持ちが強いです」と話し、浮かれる様子は微塵もない。

 その言葉は紛れもなく本心だろうが、この日の試合のプレーぶりに満足できていないからでもあったろう。立ち上がりから主導権を握ったのは大宮で、前半のほぼすべての時間帯でボールを支配されチャンスはほとんど作れなかった。厳しいプレスに苦しみ、切り替えの面でも後手に回った。それでも、無失点で前半を終えると後半の立ち上がりに、風間宏希からのロングフィードに走り込んだ平松宗が相手DFと競りながらもうまく体を使って抜け出し、GKの出際に足を伸ばして流し込んだ。

 その後は同点を狙う大宮が攻撃への意欲を強めるが、群馬は押されながらも決定機を作らせることなく逃げ切って勝利を手にした。大槻監督も「(押し込まれる展開でも)焦れずにしっかりとゲームを進めた。最後までハードワークしてくれた」と劣勢の戦いでも勝ち点3をつかんだことは評価していたが、ここまでこういった戦いで4連勝してきたわけではなかった。今季の群馬は中盤からボールをつないで主導権を握るサッカーができている。前節のVファーレン長崎戦でも前半など完全にボールを握って左右に展開し、多くのチャンスを作ってそこから得点も挙げた。

 後半はやや失速した感があったものの、1―0のまましっかり勝ちきった。中盤の風間と天笠泰輝を中心にボールを動かし、右サイドバックの岡本一真が高い位置を取って、左サイドのMF川上エドオジョン智慧のスピードで両サイドを崩し、トップ下の長倉幹樹が変幻自在の動きで相手ディフェンスを攪乱し、右MFの佐藤亮は中へ入って鋭い得点感覚を発揮する。佐藤は第6節からの3連勝で全試合に得点している。スムーズな連携とアイディアのある展開で相手ディフェンスを打ち破ってきたのだ。

 しかし、この日は大宮の相馬直樹監督が「相手の攻撃の狙いはこういう形だろうと、そういったところをうまく抑えることができた」と語ったように、好調の要因を研究されて消されてしまったように見えた。素早いプレスに中盤で時間を与えてもらえず、好調時のテンポの良いつなぎができなかった。大宮側の左サイドで出場した泉澤仁が高い位置で切れのある動きを見せて対応に追われた岡本はほとんど攻め上がることができず、川上も厳しいマークを受けて両サイドからの攻撃を封じられた。

 それでも、ディフェンス面で集中力を欠かず、粘り強い対応が最後までできたのは収穫だろう。自分たちのペースで進めることができる試合をさらに増やしたいところだが、思い通りにいかない試合でも勝ち点を獲得できる力を示した。リーグ戦は11月まで続く長丁場。まだ4分の1も終わっていない。今後も厳しい戦いは続くが、その戦いぶりはさらに勝ち点を積み上げていく可能性を感じさせる。

 今季の群馬は、注目チームの一つだろう。

取材◎国吉好弘


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