上写真=田邉秀斗が千葉でいきなりインパクトを残している(写真◎J.LEAGUE)
「一人でやっちゃうよ、というぐらいの気持ちじゃないと」
田邉秀斗がすっかりジェフユナイテッド千葉の主力を張っている。
「移籍に抵抗はまったくなくて、このタイミングで声をかけていただいたということは、想像ですけど、戦力として考えてくれているのかなと。チーム状況としても守備の選手が(ケガなどで)いないと聞いていたので、自分が行けば試合にも絡めるかなと思って即決しました」
7月に川崎フロンターレから育成型期限付き移籍で加わって、ファジアーノ岡山戦、ザスパクサツ群馬戦と2試合連続でフル出場を果たした。そして、8月14日にはホームのフクダ電子アリーナに初お目見えしそうだ。
「フクアリは初めてですし、そこから3連戦。まず1試合目で格上を倒して勢いに乗って、3連勝で終わりたい」
威勢のよさが気持ちいい。
「アウェーでも岡山や群馬にたくさんのサポーターが駆けつけてくれましたから、ホームならもっと力強い応援が聞けると思うので楽しみです」
相手は7位のFC町田ゼルビアだ。千葉は10位だが、消化試合数が1試合少なく、勝ち点差はわずかに2だから、直接対決で勝ってひっくり返すことができる。
千葉は今季は3バックでスタートし、第20節の途中から4バックで戦ってきたが、田邉の加入に合わせて3バックに戻した。田邉はその左を担当するが、最初の試合となった岡山戦でいきなり個性を爆発させた。
0-1で迎えた77分、自陣のペナルティーエリア手前で相手のパスミスを拾って一気にドリブルで突き進んだ。相手をひきつけて左へ送り、櫻川ソロモンの折り返しを中央でチアゴ・デ・レオンソがプッシュして同点に持ち込んだ。後ろから見ていた新井章太も思わず「そのままゴールを決めちゃうんじゃないかと思った」と驚くほどの迫力だった。
「自分はまだ加入させてもらって2週間ぐらいしか経っていないですけど、(新井)一耀さん、(チャン・)ミンギュさん、(新井)章太さんと後ろの選手の先輩に声をかけてもらっていて、なかなか合わせられていないところはありますけれど、カバーしてもらっています。やりたいようにやっていいよと言われていて、ありがたいですね」
速さと力強さが自慢だ。3バックはこれまで経験したことがなかったというが、その分、「監督が一番求めているプレーを意識しています」と吸収するスピードを高めていく。求められていることとは、「監督からは3バックの両サイドは攻めにも参加しなければいけないから、スピードとパワフルさを生かしてくれと言われています」。
岡山戦のドリブルはその象徴的なプレーになって、千葉のファン・サポーターへの強烈なインパクトになった。
「決断力というより、思い切りの良さですかね。自分は若いので、自由にやるというか、周りに気を使わずに一人でやっちゃうよ、というぐらいの気持ちじゃないと戦えないと思っているので、前が空いていたのでいけると思って走った感じです」
状況を見て判断を下す力は、川崎Fで磨いてきたこと。味方と相手を「見て」プレーを「選ぶ」のは、「止める・蹴る」と同様に重要だとたたき込まれた。そして、「一列飛ばした縦パス、ボランチやシャドーやフォワードに一発で当てる縦パスは、川崎で得たもの」だと胸を張る。
「試合に出ることでしかわからない試合運びのことや、試合でしか経験できないことがたくさんあります。試合に出られることの楽しみは一番大きいですね」
それは、試合に出れば結果を残す自信があるから。
「守備では3バックに慣れていないので、早く慣れないといけないことが一番大きいですね。技術や判断は劣っていないと思っているので、自信を持ってやっています」
送り出してくれた川崎Fの鬼木達監督や仲間たちにも、プレーすることで存在感を示したい。
「活躍できるかどうかは自分次第だと言われて来ました。身体能力の高さというような自分の良さをいかに有効に出せるかが大事だと。そこはここまで2試合で出せていると思います」
残り13試合がますます楽しみになってくる。