上写真=高木善朗が5月以来のゴールを挙げて、首位キープに導いた。アシストの鈴木孝司と笑顔(写真◎J.LEAGUE)
■2022年6月11日 J2リーグ第21節(昭和電ド/6,526人)
大分 1-2 新潟
得点者:(大)長沢駿
(新)高木善朗2
「迷惑をかけた分、ゴールで取り返そうと」
その瞬間、巧みにすり抜けた。
アルビレックス新潟が臨んだ大分トリニータとのアウェーゲーム。ボールを大切に運びながら前進していくポリシーを持つ「似た者同士」の対決で、先に仕掛けたのが新潟だ。22分、中盤左で受けた鈴木孝司がくるりと回って中央を向いた瞬間に、DFの間から高木善朗がすり抜けた。そこにパスが出てきてそのままゴールへ一直線、GK高木駿が飛び出す動きを見て、ペナルティーエリア手前からゴール右へとていねいに流し込んだ。
「出場できなくてチームに迷惑をかけた分、ゴールで取り返そうと思ったのでうれしいです」
今季もチームの中心として君臨しながら、5月の3試合に欠場した。その間は2勝1敗と仲間たちが勝ち越していた。復帰して1勝1分けと負けなしで臨んだこの大分戦は、期するものがあった。
後半開始早々の47分にもゴールを決めきった。右サイドからの松田詠太郎のセンタリングに右足を振って、ボールはDFに当たってコースが変わり、右ポストの内側に当たって入った。松田が持ったときに鈴木孝司が左から斜めにニアに突っ込んだのだが、首を振ってこの動きを確認し、DFが釣られて空いたファーサイドへと走る進路を変更してフリーになっていた。このあたりのコンビネーションはお手の物だ。ゴールが決まるとすぐに、鈴木に何度もお辞儀をする最敬礼で感謝した。
「2本ともいいボールをチームメートが出してくれたので、流し込むだけでした」と謙遜するのもいつもどおり。1点目は後ろからDFの足が伸びてくる瞬間にシュートを放つ難しいタイミングだったし、2点目もほんの一瞬遅れたら寄せてきたDFに完全にブロックされていたはず。ぎりぎりまで引きつけて狙いすますフィニッシャーの感性が研ぎ澄まされていた。
しかし、これで大分が開き直った。このあとは最後まで猛攻を受け続ける展開に。高木は66分と早いタイミングで伊藤涼太郎にあとを任せてピッチを退き、ベンチから声を出し続けた。なんとか反撃を1点に抑えて逃げ切りに成功。「苦しいゲームでしたが、勝ちきることができてよかったです」と安堵の笑顔を見せた。
高木の1試合2得点は昨年7月の栃木SC戦以来となる。昨季は全42試合に出場して10ゴールを挙げたが、今季は前半戦17試合の出場で6ゴール。昨年超えも見えてきた。
チームもこれで最初の21試合を終えて、勝ち点を42まで積み上げて首位だ。勝ち点で並んでいたベガルタ仙台と横浜FCはそれぞれ引き分けたため、首位を堅持した上に2ポイントを先行する展開になった。単純計算では、シーズンが終わったときの勝ち点は84。22チームで戦うJ2では2019年に自動昇格した柏レイソル、20年のアビスパ福岡、徳島ヴォルティスと同じ数字で、たとえば18年の松本山雅、大分の77、76を軽々上回る。
だがそれも、これから手にしなければならないもの。
「後半戦も一つひとつ、大事に勝っていくだけです」
チーム全員の真っ直ぐな気持ちを代弁するのだった。