上写真=ブワニカ啓太は「1点じゃ終わらないし、チームを勝たせたい意欲が出てきた」(写真提供◎JEFUNITED)
「何百回」と「何百本」
左から風間宏矢の横パスを見木友哉が縦にすぱっと差し込み、チアゴ・デ・レオンソが落としたところに、ブワニカ啓太。ポンとはねたボールにタイミングを合わせて左足で鋭くボールをたたくと、パワーショットがゴール左に突き刺さった。
ジェフユナイテッド千葉が水戸ホーリーホックと対戦したJ2第19節。12分に先制されて迎えた21分に飛び出したスーパーゴールだ。これで1-1に追いついた千葉は、見木が38分に逆転ゴールを決めて2-1で今季初の連勝を手にした。
「何回見ても、自画自賛になりますけど、いいゴールだなと思いますね」
「何回も見ましたね…何百回ぐらいですかね」
ゆっくりと落ち着いた口調で、でもうれしそうにニコニコしながら振り返る19歳の初々しさ。
「利き足じゃない左足であんなにいいシュートが打てたのは人生で一度もなかったので、左足で初めて、しかも、プロに入って初めて足で決められたので良かったです」
2021年の開幕戦で高卒ルーキーとしてプロ初ゴールを記録していて、これは186センチの高さを生かしたヘッドで決めたもの。プロ2点目は、利き足より先に逆足で決めてみせた。
そんな印象的なフィニッシュは、練習の成果だ。
「全体練習が終わったあとの自主練でコーチとキーパーに手伝ってもらって、何十本、何百本と毎日打っていました」
最高のゴールの映像を見返した回数と同じぐらいの本数を、毎日のシュート練習に費やしているのだ。
「足に当てる感覚や、自分が立っている位置からゴールの位置を計算して練習しています」
その技術を引き出したのが、仲間との関係。ゴールに至るまでの組み立ても素晴らしく、縦・横・縦・横とつなぎ、フィニッシュまでも完璧な一撃は、チアゴとの相性の良さも大きな理由の一つだ。最前線に構えるチアゴの周囲のスペースに、見木や風間とともに出入りして攻めていった。
「やりやすかったですね、すごく。自分は身長も大きくて、前で相手を背負うタイプと言われるんですけど、こう見えて試合を組み立てるの好きなんです。1.5列目というか、チアゴのような選手の下でウロチョロするのが好きで、チアゴも合わせてくれて動きやすかったです」
長身としなやかな身のこなしで前を向いたときに最大限の威力を発揮することは、この素晴らしいゴールが何よりも示している。
「でも、次に向けていい準備をしなければいけないと思います」という生真面目さが、最大の武器かもしれない。地道にシュート練習を重ねることができたのも、そのおかげだ。そして、もう一つ。
「まだ19歳なので、寝れば体は回復しますから」
連戦連発を期待したくなる頼もしさだ。