9試合を終えて0勝3分け6敗の最下位に低迷していた大宮アルディージャが16日、ホームでジェフユナイテッド千葉を破り、今季初勝利を手にした。今回の勝利のキーパーソンとなったのが、再建を託され、12日に就任した原博実フットボール本部長だった。千葉戦に向け、原本部長は監督、スタッフ、選手に何を求めたのか。

上写真=千葉戦の前日に、オンラインで取材に応じた原博実フットボール本部長(写真◎スクリーンショット)

いま自分ができることをやっていますか?

 大宮がホームで千葉に2-1で勝ち切り、今季初勝利を手にした。長いトンネルをようやく抜け出すことができたのは、12日にフットボール本部長に就任した原博実氏の存在が大きかった。スタッフと選手に檄を飛ばし、チームのため、ファン・サポーターのため、ともに戦うことを求めた。

 千葉戦で2ゴールを決め、勝利に貢献した河田篤秀は試合後、「一番ダメなところをはっきり言ってくれて、今まではポジティブなことばかりだったけれど、ダメなところをはっきり言ってくれて、なおかつ一緒に戦おうと言ってくれて大きな支えになった。この人のためにも頑張ろうと思った」と原効果があったことを明かした。

 9日の甲府戦で逆転負けを喫したあと、原部長は大宮の佐野社長からフットボール本部長就任のオファーを受けたという。今年3月にJリーグ副チェアマンを退任し、「しばらくはゆっくりとする」と話していたが、突然のオファーに驚きつつも、求められたことは「素直にうれしかった」と振り返った。そしてオファーを受けると決断してからの行動は早かった。練習場に趣き、スタッフたちと話し、選手にも思いを語った。低迷するチームの現状把握に努めるとともに、間近に迫った千葉戦に向けて、できる限りの準備を進めていった。

 15日の就任会見の席で原本部長自身が説明したところによれば、練習を見たのは3日のみ。その印象について問われると「大人しい選手が多い」と話した。一方で「練習環境に恵まれており、選手が本来もっているポテンシャルをうまく引き出せれば」浮上は可能だと感じたという。また、チーム作りの方向性、求めるスタイルに関しては「霜田正浩監督のアグレッシブなサッカーや求めるものは当然リスペクトしています。ただ、いまはそれを発揮できていない。どこかうまくやろうとしてミスして失点につながっている場面も多い。その点を変えなければ難しいということは、はっきりと監督やスタッフに話しました。外から見た印象をそうだと。ミスを怖れているとこともあり、そこをどう変えられるか」とプレーする選手の意識の変化が今は何よりも重要であると強調した。

 原本部長は霜田監督とFC東京時代から指導者と強化スタッフ、日本サッカー協会では技術委員長と技術委員としてともに仕事にあたってきた間柄。「何でも話せる関係」だという。戦術や選手起用に口を出すことはないものの、外から見て感じたことをそのままぶつけることで、チームの中にいて気づけなくなっていたことを指摘できればと、自身のスタンスについて説明した。

 果たして千葉戦では、勝負弱さを露呈することはなく、前向きな戦いぶりで勝利をつかみ取ることに成功した。霜田監督は「(原本部長と)基本的にサッカーに対する考え方が似ていて、長い間、一緒にやってきましたが、思っていることを言ってくれるし、自分が言い足りないところを直接、選手に言ってくれることもある。一緒にグラウンドに立って向き合ってきたが、非常に心強い」とその存在の大きさについて語った。

 現状を劇的に変える特効薬などない。それは、原本部長が就任会見の席上で繰り返し強調していたことでもある。重要なのは、ベースとなる部分を見つめ直し、戦う姿勢をしっかり出すこと。「いま自分ができることを全力でやっていますか、と。少なくともその姿が見えないよねと。誰かのせいではなく、自分がやるというところを見せてほしい。今、この瞬間から」。少なくとも原本部長の言葉がチームを、選手を刺激したことは間違いないだろう。「大きな意味を持っている」と位置付けていた千葉戦で、求めていた「戦う姿勢」を見せることができ、勝利も手にした。重要なのは、この変化を続けていくこと。

 強化部のほか、女子部、育成部、普及部など、フットボール本部長の仕事は多岐にわたる。現状を鑑みて、まずはトップチームの立て直しに注力するとしている。その先に、どんな未来をつくっていくのかも含めて、原本部長の手腕に大きな、大きな期待がかかるーー。


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