大宮アルディージャがついに初白星を手にした4月16日の明治安田生命J2リーグ第10節。ジェフユナイテッド千葉を相手に2つの鮮やかなゴールを奪ったのが、河田篤秀だ。ともに左足からもぎ取ったゴールは、その特徴を最大限に生かす、チームとしての狙いの結実だった。

上写真=9分に相手ミスを逃さず蹴り込んで先制。河田篤秀が決めればチームが勢いづく(写真◎J.LEAGUE)

■2022年4月16日 J2リーグ第10節(NACK/5,432人)
大宮 2-1 千葉
得点者:(大)河田篤秀2
    (千)新井一耀

「やっと一つ勝って安心した気持ち」

 初勝利をもたらしたのは、やはりこの男だった。河田篤秀。2ゴールをもぎ取った根っからのゴールハンターは、冷徹さを研ぎ澄ませていた。

 先制ゴールは9分だ。GK南雄太が大きく右サイドに蹴り込んで、跳ね上がったところでDF鈴木大輔が収めようとするが、トラップがわずかに乱れた。河田はそのスキを逃さずに奪ってそのまま前に持ち出し、ペナルティーエリアに入る手前で左足インサイドでていねいにゴール左を射抜いた。

「1点目はラッキーな形で奪って、キーパーがバタついているのが見えたので冷静に流し込みました」

「こぼれたところで打たないといけないと思って、シュートで終わることを意識して打ててよかったです」

 河田はしっかりGK新井章太の動きを観察して決めきった。

 2点目が大きかった。68分、今度はハーフウェーライン付近で柴山昌也からボールを預かると、一直線にゴールへ。フィジカル自慢の田口泰士の厳しいチャージを振りほどき、カバーに入ったチャン・ミンギュの股を軽やかに抜いて、最後は左足で右サイドへ。ポストに当たって転がり込んだ。

「2点目は集中してゴールを見て、振り抜いて決めきることができました」

「自分で決めてやるという気持ちが強くて振り抜けたのが良かったです」

 このあとに1点は返されたものの逃げ切って、ついに初勝利だ。

「状況が状況なので、すごくうれしいというよりは、やっと一つ勝って安心した気持ちです」

 正直に心の内を明かす。9試合も勝てず、日本サッカーのレジェンドでもある元Jリーグ副理事長の原博実氏を招へいして、フットボール本部長に据えて変革を謳ったゲーム。ようやく、の思いだった。

「こういう状況になっているのは、一番はピッチの選手の責任が大きいと思います。自分のダメなプレー、できていないプレーを良くして出していくことを毎日考えていました」

 勝利のためにはなりふり構わなかった。チームとしての狙いを、アンカーに入った大橋尚志が明かす。

「割り切ってやっていたので、ボールを受ける選手たちもまず足元よりは相手の裏という意識はあったと思います。出し手側の自分としても、第一優先は相手の背後だったし、相手を後ろ向きにすることは意識していました」

 その意図が河田の強みときれいに合致した。

「僕はうまい選手ではないけれど、ゴール前では脅威になれると思うので、できるだけゴールに近いところでプレーするのがいいとチームとしてもわかっています。今日も中盤の選手はなかなか持ち味を出せない中でも、僕を生かすためにプレーしてくれました」

 仲間の献身が自分にゴールをもたらしたと知っている。

「フォワードしてもキャラクターとしても、得点が求められています。僕が取らないとチームは乗っていかないし、逆に僕が取ればいいゲームになると思います」

 霜田正浩監督は不恰好でも魂を見せたと言った。だが、少なくとも河田の2つのゴールは、不恰好ではなく、とてもきれいなゴールだった。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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