上写真=鈴木大輔が古巣相手に劇的決勝点。「特別なゴールになりました」(写真◎J.LEAGUE)
■2022年3月30日 J2リーグ第7節(フクアリ/4,852人)
千葉 1-0 新潟
得点者:(千)鈴木大輔
「みんなの思いがあのゴールに詰まっていて」
鈴木大輔がもみくちゃだ。アルビレックス新潟を沈めた90+5分の劇的な決勝ゴール。田口泰士の左CKにニアで頭を突き出すようにしてボールを触り、きれいにゴール右に飛び込んでいった。仲間たちにのしかかられても、心地よかった。
「ホームで勝とうということで、みんな気持ちが入っていました。ロスタイムだったのでラストチャンスだと思っていました」
会心のゴールには予感があった。
「あの二つぐらい前に泰士と話して、最後に決めたあたりのスペースで勝負したいと伝えたんです。一個前から合ってきていたので、何かが起こるだろうと。みんなの思いがあのゴールに詰まっていて、劇的だったので特別なゴールになりました」
今季ホーム初勝利をつかみ取るゴールだったことはもちろん、自身も今季初ゴールだし、会場となったホームのフクダ電子アリーナで新潟に勝ったのも初めてだったのだ。しかも、新潟は鈴木がプロのキャリアを始めた大事なクラブ。
「すごく思い入れのあるチームで、プロ入りさせてもらってデビューしたので、去年も対戦しましたけど、成長を見せたいチームです。一緒にやった選手やスタッフもいるので、その人たちの前で決めたのはすごくうれしかったし、その意味でも特別な試合になりました」
ドラマティックなゴールに目を奪われるが、本職の守備でも出色の出来だった。新潟はテクニカルな選手を多く擁し、横に広げながら中央に縦パスを差し込んでくる攻撃が得意だ。千葉はここまで開始直後の失点が多く、前節では栃木SCに終了間際にも決められていて、勝利を逃している。鈴木は定位置となる3バックの左で、その対応に集中した。78分の一瞬が象徴的だ。
「終始、ウイングバックに中間ポジションを取らせて前に出していたので、僕の後ろのカバーがいない状態で(チャン・)ミンギュが2人を見るときもあったし、後ろの3人で相手の3枚を見るときもありました。あのシーンも裏を取られてやばいかと思いましたけど、カバーを含めてトラップ際をしっかり狙えたので流れを元に戻せました。ターニングポイントだと思います」
低い位置から島田譲が最終ラインの裏にロングパスを送ってきて、イッペイ・シノヅカが抜けていった。トラップしてシュート、という瞬間に、鈴木が戻ってかき出した。絶対的なピンチを救ってみせた。
「2連敗してホームでも勝てていなくて、選手もサポーターもフラストレーションがたまっていたと思います」
キャプテンとして重々しい空気をすべて追い払う風のような、ただ一つの勝利だけではない、深い意味のある1勝をたぐり寄せた。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE