上写真=藤田和輝が55分から緊急出場。今季初の登場となったが、終始落ち着いてゴールを守り抜いた(写真◎J.LEAGUE)
■2021年8月14日 明治安田生命J2リーグ第25節(@フクアリ/観衆3,193人)
千葉 0-0 新潟
「ゼロで抑える最低限の仕事ができた」
アルビレックス新潟のGK小島亨介がジャンプしてキャッチしたところに、ジェフユナイテッド千葉の見木友哉がやや遅れて入ってくる格好になった。小島はバランスを崩して背中から落下すると、ピッチに仰向けになって動かなくなった。千葉和彦が大きな声とジェスチャーでメディカルを呼ぶ。
試合後にアルベルト監督が語ったところでは「ドクターの適切な処置のおかげで、思ったよりも軽症だと思う。サポーターの皆さんには安心してほしいと伝えたい」と大事には至らなかったようだ。一安心。
このアクシデントで急きょ、55分にピッチに入ることになったのが、藤田和輝だ。今季初出場の20歳。とはいえ、昨季は21試合に出場して、シュートへの俊敏な反応力の高さで印象に残るセーブを何度も見せてきた。
「アクシデントで出ることになりましたけど、去年のヴェルディ戦でもやっていますし、準備はしっかりしているからこそいい入りができて、(失点)ゼロで抑える最低限の仕事ができたのは良かったと思います」
昨年11月1日のJ2第30節、東京ヴェルディ戦で同じく小島の足の違和感によって後半開始から登場していて、その経験が生きた。
とはいえ、千葉が鋭い守備からどんどん攻めてきて、藤田が入ってからもスピード感のあるクロスを次々に入れてきた。だが、落ち着いて飛び出してしっかり弾き返し、今季初出場で久々の実戦とは思えない落ち着きぶりだった。
「日頃からクロスの対応は練習の中で重点を置いてやっていました。ポジショニングがニアに寄ってしまったり高い位置を取ることができなくて、今年は周りのキーパーの人に聞いて改善して、今日は飛び出すことができました」
今季は阿部航斗が台頭してゴールマウスを守り、藤田はベンチを温めた。小島が負傷から戻ってくると、ベンチに入れなくなった。でも、準備を怠ることだけはしなかった。
「試合にすんなり入れるようになりましたし、去年を経験しているからこそ自信を持って今日も試合に臨めたので、メンタル面は成長したと思います。ポジショニングもクロスに出ていくところも改善できたと思っています。成長を実感できた試合でした」
緊急出場にも動じない安定感。藤田が欲しかったものを手に入れた。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE