上写真=新井章太は天皇杯で古巣川崎Fとの対決へ。特別な思いをぶつける(写真◎J.LEAGUE)
「ただ、本当に完璧な試合をしているわけではないと思うんです」
ジェフユナイテッド千葉のGK新井章太にとって、7月21日の天皇杯3回戦は感慨深い対戦となる。2019年オフに川崎フロンターレから千葉に移籍。1年半ほどがたって、その古巣と初めて戦うことになった。
試合が始まる前に、やることがあるという。
「鬼木さんには、こっちが勝ってから行くとかわいそうなので、先にあいさつに行こうかなと思います」
もちろんジョークだが、鬼木達監督へのリスペクトと感謝を表しながら、それだけリラックスして古巣戦を心待ちにしている証拠だ。
川崎Fは誰もが仰ぎ見る絶対王者。自分を育ててくれたクラブだという特別な思いを差し引いても、自然と気持ちは奮い立つ。まずはGKの本分としては、とにかく失点を防ぐことに集中していく。
「枠に来たボールは全部止めて、しっかり攻撃につなげられるように自分の仕事を全うしたい」
そう、守るのは攻めるためだ。攻めるのは勝つためだ。だから、守るのは勝つためだ。天皇杯2回戦ではJ3のAC長野パルセイロが川崎Fに挑み、アディショナルタイムまで1-0で追い詰めた。結局、同点とされてPK戦で敗れはしたが、ヒントはある。
「天皇杯は、リーグとは違うしACLとも違うだろうし、独特な雰囲気でモチベーションも高くなるから、やってやるんだというチャレンジャー精神が一番大事になると思います」
千葉はJ2リーグのここ4試合で2勝2分け、失点はわずかに2と安定してきている。新井の「恩返しセーブ」連発でしっかり守りながら、どこかで一撃を食らわす狙いだ。どこを突くイメージだろうか。
「突くところは…なかなかないですね」
これは謙遜か、それともブラフなのか。
「セットプレーでもしっかり守ってくるチームですし、ただ、本当に完璧な試合をしているわけではないと思うんです。一瞬のスキを見つけることができるか。暑くなってきているので、切り替えが続かない場面も出てくるはずで、そこでこっちがどう頑張れるか」
川崎Fといえども、絶対はないのがサッカーだ。一昨シーズンまで所属していたから、よくわかる。
「しっかり相手を見てどこがチャンスになるのか、相手がやられたら嫌なところを考えられる選手がこちらにたくさんいれば」
千葉に来てから仲間とていねいに積み上げてきたものをぶつける、特別な一戦だ。だからこそ、意欲はシンプルな一言に集約されていく。
「絶対チャンスは転がってくると思うので、いかに決められるかだと思います」