上写真=瀬沼優司は前半アディショナルタイムにテクニカルなフィニッシュを見せるなど、前線の脅威であり続けた(写真◎J.LEAGUE)
■2021年4月17日 明治安田生命J2リーグ第8節(@デンカS/観衆10,148人)
新潟 1-0 金沢
得点:(新)矢村健
「準備してきたことを出せた」
前半アディショナルタイムだった。ハーフウェーラインから少し相手陣内左に入ったところで、ツエーゲン金沢のボランチ、大橋尚志が顔を上げた。その視線の先にはFW瀬沼優司。アルビレックス新潟のセンターバック、千葉和彦と舞行龍ジェームズの間を左斜めに走り抜けると、大橋の送ったボールが舞行龍の頭上を越えて落ちてくる。
瀬沼は右足で優しくボールの勢いを受け止めてから、ショートバウンドですかさず左足で蹴り込む。トラップからシュートまでの間髪入れないリズムで、飛び出してきたGK阿部航斗の脇を抜いてゴールを陥れた。
しかし、オフサイド。
J2第8節の新潟対金沢戦は首位と3位の上位決戦。金沢にとってはここで一泡吹かせて一歩近づくチャンスだった。かつて新潟を率いた柳下正明監督の下、徹底した守備をベースにして相手守備陣の裏側を突いていった。「数は少ないけれど、狙いを持った攻撃はできた」と柳下監督。それが、この「幻のゴール」に凝縮されていた。
「新潟さんを相手にやるべきことを1週間トレーニングしてきて、出せたと思います」
瀬沼もその点には手応えを感じている。しかし、1点が遠かった。瀬沼も結局シュートなしに終わり、チームとしても2本だけ。0-1という最少スコアで今季3敗目、4位に後退した。
「結果は残念でしたが、相手に決めるべきところで上回られました」と瀬沼は地力の差を認めつつも、「準備してきたことを出せたのは次につなげたいと思います」とゲームに臨むための日々からできたことにも目を向ける。今季、横浜FCから加わって背番号10を与えられ、開幕から全試合に先発出場。生来の生真面目さと大黒柱の自覚が重なり合って、31歳になる今季も成長を止めない。
「ズルズル負けないようにしないと。連敗はしたくなかったですけど、してしまったので、早く抜け出せるように。そして、勝ったら連勝できるようにしていきたいと思います。次が大事になるので、いい準備をして向かっていきたい」
次は中3日でホームにブラウブリッツ秋田を迎える。J3からの昇格1年目だが、ハードワークを武器にすでに3勝、勝ち点差はわずかに1だから、負けるわけにはいかない。
写真◎J.LEAGUE