上写真=J2で監督を務めるのは今季が初めてとなる渡邉監督(写真◎石倉利英)
「何ら満足できるものはない」
2月28日の明治安田生命J2リーグ第1節で、レノファ山口FCは松本山雅FCとホームの維新みらいふスタジアムで対戦し、0-0で引き分けた。渡邉監督は3月4日のオンライン会見で、試合終了直後に選手たちに「昇格候補を相手に堂々と渡り合えたのは素晴らしいこと。ただ我々は、維新は勝つ場所だと証明しなければならなかった。そう考えれば、何ら満足できるものはない。もっと突き詰めていかなければいけない、と話した」と明かした。
ただ、あらためて映像を振り返って「意図的にやれているものも、たくさんあるので、もっと質を高めていきましょうと話した」とも語った。意図的なプレーについて「簡単に言うと、パスを100本つながなくても、1本のパスで点を取れればいいので、それをしっかり探せたか、トライできたかどうかが、ものすごく大事」と説明し、「1本のパスで相手の背中を取るシーンがたくさんあった。それは非常によかった」と評価している。
開幕戦ではアクシデントもあった。徳島ヴォルティスから完全移籍で加入し、2016年以来となる山口復帰で先発出場していたMF島屋八徳が、負傷でハーフタイムに交代。左足関節外側側副靱帯損傷、4週間程度の加療予定と診断されて長期離脱することになった。
渡邉監督は島屋について「覚悟を持って山口に戻ってきてくれて、キャンプから賢く、気が利いて、質が高いプレーを見せ続けていた」とコメント。「そういった選手がいなくなるのは、僕自身もつらいですが、ヤツ(島屋のニックネーム)自身が一番つらいと思う。彼の思いを背負って、我々は戦わなければいけないと思っている」と思いやった。
一方で「もちろん、シーズンは全員で動かさなければいけない。出番が俺のところに来ると思って準備してくれている選手もたくさんいる」と期待を寄せた。「他の選手にとってみれば大きなチャンス。しっかり補い合って進んでいく。チームの総合力を示せれば」と今後への決意を示している。
6日の第2節では、アウェーでFC琉球と対戦する。「開幕戦で自分たちがやろうとしたことに、どれくらいチャレンジできるのか、というところは示したい」という渡邉監督は「ただ、今季初めてのアウェー戦で、気温が高くなると想定している。あまりナーバスになりたくないですが、しっかり想定して備えていきたい」とポイントの一つを挙げた。また「我々があまり構えることなく、攻守においてどれだけ出ていけるかを、もう少し示していければ」と戦術面の狙いも明かしている。
14年途中から19年までベガルタ仙台で長く指揮を執ったが、全42試合のJ2で指揮を執るのは初めて。長いシーズン、チームの調子には浮き沈みが当然あるだろうが、監督としてどうありたいか、との問いには「動じないことです」と即答。「僕がうわついたり、落ち込んだり、そういう姿を見せてはいけないと思っている。勝とうが負けようが、地に足をつけて戦う。僕自身が、その姿を見せたい」と言葉に力を込めた。
松本戦では試合終了直前、FW岸田和人が劇的な決勝ゴールを決めたかと思われたが、ハンドの反則で得点とはならなかった。動じない、と言いつつ「幻のゴールの瞬間は、飛び上がって喜びましたけど」と笑った渡邉監督は「瞬間、瞬間のうれしさ、悔しさは当然ある。ただ試合が終われば、しっかり冷静に分析して次に備えることは42試合、何ら変わることなく続いていく。僕自身は常に冷静に、動じずに、浮かれずにやっていくだけ」ときっぱり。一方で「動じずにいるのは僕らだけ。メディアの皆さん、サポーターの皆さんは、どうぞ一喜一憂してください」と呼びかけた。