上写真=同点ゴールを決めて絶叫するブラニカ啓太(写真◎小山真司)
■2021年2月28日 J2リーグ第1節(@フクダ電/観衆3,798人)
千葉 1-1 甲府
得点:(千)ブワニカ啓太
(甲)中村亮太朗
怖いものないなと思ってピッチに入りました
左から安田理大が送ったクロスに対して、ゴールエリアの右で競り合う相手守備者よりも先にジャンプ。頭でボールをとらえ、逆サイドのネットへシュートを決めた。
空間認知能力。ジャンプの滞空時間。そして高い打点のヘディング。千葉の同点ゴールには、ブワニカ啓太の持ち味がぎっしり詰まっていた。
「(ゴールは)一回、自分でセンタリングを上げたのがゴール前を通り過ぎてしまって、その後でミチくん(安田)がボールを拾ったのを見たので、すぐに切り替えて中に入りました。そうしたら本当に良いボールが上がってきて、いつも練習しているヘディングで決めることができたので、最高のゴールだったと思います」
今季、修徳高から加入したプロ1年目。キャンプからアピールに努め、ブワニカ自身も手応えをつかんでいたという。開幕をベンチ入りを告げられたときは喜びよりも「先発ではなくて少し悔しかった」という。1点を追う展開の中で、後半開始から出場。末吉塁とともに最初のカードとして送り出されたことを考えても、指揮官の評価の高さがうかがえる。尹晶煥監督に「緊張しないで行ってこい」と送り出され、「自分が入って点を取るイメージもできていましたし、流れを変えないといけないと思っていました」「1年目での初出場なんで、怖いものないなと思って入りました」と、自分のプレーに集中し、強い気持ちで同点ゴールを生み出した。
試合前にはチームメイトにこんな予言を受けていたと明かす。
「試合前に、ヨネさん(米倉恒貴)に『お前、今日とるんじゃない』と言われていて、その予言が当たったのか分からないですけど、みんな期待してくれていました。その期待に応えられてよかったです」
ゴール後のゆりかごパフォーマンスは「通訳のファブリシオさんが最近、子どもが生まれて、『ブワ、ゴール決めたらゆりかごやってよ』と言われていたのでやりました」とスタッフのリクエストに応えたもの。どちらも、ルーキーがチームに溶け込み、すっかり愛される存在になっていることが分かるエピソードだろう。
「チームを勝利に導けないと意味がいないので、今日は1点しか取れなかったですけど、次節から2点、3点取れるように、チームとしても成長していけたらと思います」
大いになる可能性を感じさせたデビュー戦を終えた直後、ブワニカはすぐに次節へと目を向けた。ゴールへの意欲も、ストライカーとしての自負も、チームの一員としての自覚も、新人のそれではない。プレスのタイミングや位置取りという点で守備面ではまだまだ課題も見られたが、その成長が、J1昇格を目指す千葉にとって、大きなプラスになるのは間違いない。
取材◎佐藤 景 写真◎小山真司