上写真=後半から登場し、同点ゴールを決めた千葉のブワニカ啓太(写真◎小山真司)
■2021年2月28日 J2リーグ第1節(@フクダ電/観衆3,798人)
千葉 1-1 甲府
得点:(千)ブワニカ啓太
(甲)中村亮太朗
・千葉メンバー:GK鈴木椋大、DF米倉恒貴、岡野洵、鈴木大輔、安田理大、MF福満隆貴(46分:末吉塁)、小島秀仁、熊谷アンドリュー(71分:高橋壱晟)、FW岩崎悠人、船山貴之(46分:ブワニカ啓太)、大槻周平(71分:見木友哉)
・甲府メンバー:GK岡西宏祐、DF小柳達司、山本英臣、メンデス、荒木翔、関口正大、MF野澤英之(83分:山田陸)、中村亮太朗、FW三平和司(83分:宮崎純真)、金井貢史(29分:野津田岳人)、有田光希(67分:鳥海芳樹)
両指揮官は「次につながる試合」
前半の千葉はキャンプから積み上げてきた『攻撃な守備』をピッチで表現できていた。前から連動してプレッシャーをかけ、ボールをロストして攻守が入れ替わる際には素早い切り替えで相手を囲んだ。だが、前半のアディショナルタイム、プレスを外されて先制を許してしまう。甲府にボールを動かされ、(千葉の)左から右へのサイドチェンジを許すと、スライドが遅れた。荒木にクロスを許し、ボックス内で構えていた中村に寄せ切れずに決められた。プレスが機能していなかったわけではない。失点するまでは、甲府のつなぎを封じ、良いペースで試合を運んでいた。ただ、前半終了間際に一瞬、スキができてしまった。
失点を機に甲府に渡した「流れを変えるため」、千葉は後半開始から手を打った。2枚替えで攻撃の活性化を図る。船山に代えてブワニカ、福満に代えて末吉を投入して1点を取りにいく。結果はすぐに表れた。末吉が右サイドで攻撃に躍動感をもたらし、そして修徳高から加入したルーキーが歓喜をもたらしたのだ。
57分だった。ボックス右で粘ったブワニカのクロスは中央で味方に合わなかったものの、攻め上がっていた左サイドバックの安田がフォロー。再びボックス内へクロスを供給すると、相手よりも早く、そして高くジャンプしたブワニカのヘッドが決まった。
1点を返して勢いづいた千葉は、そのまま一気に勝負をつけんと前に出た。しかし畳みかけることはできず、たびたび甲府の反攻を受けることになる。攻守が目まぐるしく変わる中、最後の最後で千葉にピンチが訪れた。相手CKの場面で小柳のシュートをブロックするために体を投げ出した岡野の手がボールに当たってしまったのだ。PKの判定。そのとき、時計はすでに92分を過ぎていた。
千葉にとっては昨季、ホームでことごとく勝ち点を失ったアディショナルタイムの悪夢がよぎるような展開だった。甲府のキッカーは、負傷交代した金井に代わって前半途中からプレーしていた野津田。守るのは、プロ10年目にして開幕戦初先発だった鈴木。スタンドの3,798人が固唾をのんで見守る中、鈴木はコースを読み切って左に飛び、見事にPKをストップした。時間帯からして決められれば終わりのPKを止めて、チームを救った。
「最後に椋大がビッグセーブしてくれたことによって負け試合を引き分けに持ってこれたことは、良い方に考えられるのではないかと思います。若い選手たちが加入したことによって、組み合わせだったりコンビネーションだったり、意欲を示せた。これからもこういう試合を続けなければいけない。勝利を手にしたかったですが、良かった部分とそうでない部分を分析して、次に勝つ準備をします」
尹晶煥監督は、敗色濃厚な状況から勝ち点を死守した選手たちを称え、今後につながる引き分けになったと語った。対する甲府の伊藤監督も勝ち越すチャンスを逸したが、「最後はビッグチャンスを迎えましたが、PKに関しては致し方ないこと。(内容的には)次につながるゲームだった」と手応えを口にした。
まだチームが発展途上にある中で戦った開幕戦で、勝てなかったことよりも勝ち点1を手にしたことにフォーカスするのは当然かもしれない。千葉にとっては今季がJ2で12年目、甲府にとっては4年目。ともにJ1復帰を誓って臨んだシーズンは、ポジティブなドローからのスタートになった。
取材◎佐藤景 写真◎小山真司