12月18日、V・ファーレン長崎が手倉森誠監督の退任を発表した。オンライン会見に登場した本人は「解任ですね」とするが、2年間の濃密な時間を愛おしむように、数多くの言葉で戦いの日々について紡いでいった。

上写真=「手倉森節」で多くの人を魅了してきた手倉森誠監督が長崎を去ることに(写真◎スクリーンショット)

「2021年に期待と夢が膨らむ年末を」

「退任と出ていますけど、解任ですね」

 淡々と、シンプルに。V・ファーレン長崎の手倉森誠監督は、自身の進退についてクラブから発表があったことを受けて、そう切り出した。

 12月16日のJ2第41節でヴァンフォーレ甲府に1-1で引き分けて、J1昇格を逃していた。

「将来、長崎をビッグクラブにするという意味で、少ない期間ではあったけれど礎になるものが残せたんじゃないかなと思っています。勝負の世界は勝たなければ退かなければいけないものだと思います」

 2年間の長崎での挑戦に、確固としたプライドをのぞかせる。

「やっぱり自分としては2年の時間でJ1に上げられなかった悔しさ、自分の不甲斐なさが大きい。もう1回、J2で戦うことへ申し訳なさの方が多くてね。チームに呼んだ選手やスタッフにも一緒に仕事ができなくなって申し訳ない。冷静に考えたときに、来年またじっくりとJ2で鍛え上げれば、その先のJ1では昇格からの上位争いを描きながらの仕事になっていたのではないかなとは思いますけど」

 根底にはフロントとの意識の違いがあったことも匂わせている。

「監督として選手を扱うだけではなく、いかに関わるかを大事にする人間で、心を通わせることは自分のマネジメントの中では絶対です。選手とスタッフが心を通わせるのは当然ですけど、強化部やフロントも選手を獲って獲りっぱなしではなくて、一緒に作り上げる関わりを持ってやらないと、人として心が豊かになっていかないでしょう。勝負事の世界にいるけれど、勝った負けただけじゃなくて、生きて一緒のプロジェクトに向かって進んでいることに対してもっとみんなが絡み合うことが大事で」

 具体的に何があったのかは言及しないが、その言葉や表情からはクラブとチームとの間に「すきま風」が吹いていたことを感じさせた。

 手倉森体制では、12月20日のJ2第42節、ツエーゲン金沢とのホームゲームが最後の試合になる。無理矢理にでもポジティブに考えれば、このタイミングでの発表になったことで、サポーターが手倉森監督にお別れを言える機会ができたことになる。

「自分の長崎の旅の終わりの、けじめをつける試合です」

 そう話して笑った。

「選手と話をしたのは、期待してくれているサポーターに未来に対しての夢や希望が湧くような試合をしなければいけないということ。なんでこのチームがJ1に上がれなかったんだ、と思わせるようなパフォーマンスを見せて、J1にふさわしいと思ってもらえるような戦いを見せてほしい、と。2021年に期待と夢が膨らむ年末を過ごしてもらえる試合ができればと思います」

 金沢戦では選手たちがその思いをピッチに描くだろう。そしてそのとき、改めて手倉森監督は感じるはずだ。

「J1のステージには上がれなかったけれど、我ながらいいチームを作れたんじゃないかなって」


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