上写真=ボールは支配するもののチャンスは少ない。鄭大世も現状を打破するために走った(写真◎J.LEAGUE)
■2020年11月28日 J2リーグ第37節(@トラスタ:観衆5,722人)
長崎 2-0 新潟
得点者:(長)富樫敬真、エジガル・ジュニオ
技術は引かれたところで露呈される
アウェーに乗り込んだV・ファーレン長崎戦で0-2の敗戦。これで前節の愛媛FC戦から連敗となり、しかも2試合連続でノーゴールだ。鄭大世も「もうちょっと崩したいですよね、アタッキングサードのところで…」と悩ましく振り返る。
「(期限付き移籍で)僕が来て最初に言ってたんですけど、チャンスを作らないと点は取れないわけです。チャンスが作れていないのに、フォワードの得点力不足だと言われるのは酷な話で。ポゼッションの意識はあるけれど、受けても下げることが多くて」
鄭大世自身は14分に左からの高木善朗のクロスをヘッドで狙ったが、ボールが高くやや後ろだったこともあってボールはバーの上に消えていき、38分には右から大本祐槻が単独で中に持ち込んでくさびのパス、これを中央で受けてターンして左足で狙ったが、相手のブロックにあってしまった。
30分に先制されて以降も主導権を握って押し込む時間は長かったものの、鄭大世に言わせれば「相手が引いたのがすべてですね。前半に失点してしまったのが一番大きなポイントです」と分析。自分たちの攻撃の力で盛り返したというよりは、相手が1点を守ろうと4-4-2の配置をコンパクトにしながら重心を下げてブロックを敷いたことで、こちらが前に持ち出せたように見えただけだとしている。
「引いているときには誰でもできるんですよね、4-4のブロックの間で受けるのではなくて、手前でボールを回すのは。ボールは支配してるけど、相手は怖くないんですよ。1-0でリードして4-4でちゃんとブロックを敷かれればそんなにチャンスも作れない」
今季は負傷者が続出し、渡邉新太と新井直人が骨折、福田晃斗が前十字靭帯断裂など、重傷者が多い。この試合でもボランチには今季初めてコンビを組む2人が並び、高木も堀米悠斗も経験者ではあるものの、中2日のスケジュールで関係性を高めるのは簡単ではない。
とはいえ、勝負の世界で負けた。ブロックを敷く相手を攻略するにはやはり、技術が必要なのだと話す。
「あそこまで引かれたらスペースが小さくなる分、クオリティーが求められるんですよね。ラストパスのところや狭いところのパスを通す技術は、引かれたところで露呈されるんです。引いてきたところではチャンスはほぼ作れていないので、これはどうにかしないといけない」
この試合の翌日にアビスパ福岡が勝てば、昇格の可能性が完全に消えることになる。ただ、来シーズンもアルベルト監督が指揮を執ることが決まっている。技術を大切にする監督だから、鄭大世の言う「狭いところを通す技術」を追求していく素地はある。
「でも、内容は悲観することはないと思います。相手もチャンスを作れていないわけで、ただ、先制点を取られたのがすべてでした。みんなロッカーでも落ち込んでいたけれど、前半もラストパスを通していればチャンスになった場面がたくさんあったから、悲観することはないですよ」
技術を高める作業は一朝一夕には実現できないものの、残り5試合でその部分を求めていかなければ、来年の喜びもないだろう。だから、「今日をおろそかにしたら来年も勝てない」と鄭大世は言うのだ。
写真◎J.LEAGUE