上写真=77分に登場した荻原拓也。あとわずか、という強烈なヘディングシュートが見せ場だった(写真◎J.LEAGUE)
■2020年11月15日 J2リーグ第34節(@デンカS:観衆9,355人)
新潟 0-2 千葉
得点者:(千)アラン・ピニェイロ、クレーベ
「攻撃にしっかりパワーを持つことはできました」
もし、を語るのは勝負の世界でふさわしくないとしても、口にしておきたくなるような手応えが残った。
「あそこで決めきれれば、試合が違っていたと思います」
0-2と劣勢のまま進んだ87分、右サイドからの本間至恩のクロスに飛び込んできたのが荻原拓也だった。左から中央にダッシュしてきた勢いそのままに宙を飛び、ヘディングシュート。決まった、と思った次の瞬間に、ボールは左ポストを叩いてはね返っていった。
「本間選手が裏に抜け出したときに、間に合わないかと思って全力で走ったら滞空時間のあるボールが来て、タイミング良くジャンプしてヘッドできました」
本間は受けたときに中を見て、ニアに鄭大世が飛び込んだその奥に荻原の姿を認め、あえて高さのあるボールを送ることで荻原が間に合う時間を作ったのだ。
アディショナルタイムが6分あったから、確かにここで決めて1-2にしておけば何かが起こる可能性が高まった。しかし、それもかなわなかった。
負傷から復帰して2試合目、この日もベンチスタートの荻原がピッチに登場したのは77分だった。4-2-3-1、4-4-2と形を変えながら試合を進めてきたチームはここで大本祐槻と同時に起用して、3-5-2に再変形して攻勢を狙った。大本が右、荻原が左のウイングバックとしてサイド攻撃を強めていく狙いだ。
「負けている状態で大本選手と2枚替えで入って、タスクは攻撃で点を取ってパワーを持つことでした。自分が決められたシーンがあったんですけど、攻撃にしっかりパワーを持つことはできました」
負傷者が続出するチームで、自身も左足の内転筋を痛めて4試合を欠場していた。苦しい台所事情は続いているが、この3-5-2へのシフトチェンジのように、左利きでスピードのある荻原の復帰によって攻撃のオプションを生み出すことができた。「個人的には左ウイングバックは適正ポジションだと思っているので、一つのオプションは作れたかなと。今後の試合につなげられるかなと思っています」と手応えは残った。
しかし、試合そのものは0-2のまま敗戦。J1昇格圏内の2位までは残り8試合で勝ち点15差だ。「可能性ある限り、一戦一戦全員の力を合わせて戦っていきたいと思います」と前を向くしかできることはない。
「戦えるメンバーはピッチの上で全力で戦うしかありません。ケガ人を含めて、一人でも欠けたらダメですから、チーム全体で残り8戦を戦いたい」
アルビレックス新潟というチームにとっては、ケガ人も戦力なのだ。それが「全員の力を合わせて」の言葉に込めた本当の意味だろう。
8月に浦和レッズから移籍してきて、まだアシストやゴールがない。だが、あのヘディングシュートの迫力は、ゴールに近づきつつあるのではないかと予感させるものだった。ハイクラスの左足でチームを勝利に導くチャンスは、まだ8試合もある。
写真◎J.LEAGUE