上写真=得点、アシスト、守備で輝き続けた矢村健が勝利の立役者に(写真◎J.LEAGUE)
■2020年11月4日 J2リーグ第31節(@NDスタ:観衆2,579人)
山形 1-2 新潟
得点者:(山)ヴィニシウス・アラウージョ
(新)矢村健、ロメロ・フランク
「前半で倒れるつもりでいきました」
プロ初ゴールは、感性が導いた。
18分、右のショートコーナーからつないで右から島田譲がふわりとしたボールを中央に送る。DFがバウンドの目測を誤った。そこに猛然と入ってきたのが矢村健だ。
「あそこにボールが来るなと感覚的に飛び込んだんです」
GKが触る直前に右足を伸ばしてゴールに送り込む先制点。勝利へ向けて、チームを波に乗せる一発になった。
「素直にうれしいの一言です。チャンスをもらっていたのに、得点できなかったので、ラストチャンスだと思って臨んで結果が出たので自信になりました」
「あのシーンをいま振り返っても、全然覚えていなくて、体が感覚的に動いた感じで触れました。久々の試合だったんですけど、感覚が残っていてよかったです。やっと勝利に貢献できることができてホッとできています」
せっかくのプロ初ゴールを覚えていないというのはちょっともったいない気もするが、それだけ無我夢中で体が勝手に動いたのなら、ゾーンに入っていたのかもしれない。
とはいえ、もちろん狙いはあった
「スカウティングでセットプレーのこぼれ球は意識していました。そういうところで入っていけなかったら自分の特徴を自分でつぶすことになるので、どんどん入っていけて良かったと思います」
これで終わらないのが、この日の矢村。35分、追加点をアシストしたのだ。自陣で押し込まれた山形のプレスを素早いパスではがすと、島田が前線にロングパスを送った。足元に収めた矢村は背中に張り付いてきたDFのパワーを利用するようにしてくるっと反転、そのままゴールへ向かってドリブルで突き進んだ。そこへ並走してきたロメロ・フランクが入れ替わるようにボールを持ち出して、左足で気持ちよくゴール右スミに叩き込んだ。
そして、まだまだ終わらないのが、この日の矢村。とにかくディフェンスがすさまじかった。ハイプレスを標榜する最近の新潟にあって、ロメロ・フランクとともに前線から追いかけ回す迫力はこの日のポイントになった。
「守備は自分の特徴である前線からのプレスをかけて、フリーで蹴らせないところは意識しました。そこはチームで共有していたし、前半で倒れるつもりでいきました」
今季10試合目の出場は10試合ぶりの先発。試合勘が心配だったというが、「最初の10分で感覚が戻ってきました。その部分でもホッとしました」と初々しい。それでも、ついた愛称は「キングケン」。プレーが愛称に追いついてきた。
「自分のプレーもまだまだ満足できないので、その意味でもいい波に乗っていければと思っています。結果で勝利に貢献できるのが一番いいなと思います」
ファビオとペドロ・マンジーが契約解除、渡邊新太が負傷で、FW登録の選手は3人しかいない。記念のプロ初ゴールはそんなチームの苦境を救う一発であり、4試合ぶりの勝利をもたらす貴重な先制弾でもあり、そしてきっと、「王様」の未来を明るく照らす光にもなるだろう。
写真◎J.LEAGUE