上写真=渡井理己は相手の嫌がる場所に入ってパスを循環させた(写真◎J.LEAGUE)
■2020年10月25日 J2リーグ第29節(@鳴門大塚:観衆5,171人)
徳島 0-0 新潟
「思い切りが足りなかったと」
0-0の引き分けは徳島ヴォルティスにとって、結果的には「いい薬」で済ませることもできるかもしれない。
J2第29節で、直接の対戦相手である5位のアルビレックス新潟には余計な勝ち点を与えず、4位のギラヴァンツ北九州は松本山雅FCに敗戦、3位のV・ファーレン長崎は大宮アルディージャに引き分けた。首位のアビスパ福岡はジェフユナイテッド千葉に勝ったから離されはしたが、昇格争いのライバルたちに勝ち点差を詰められることはなかった。
とはいえ、ピッチで戦った選手には引き分けで悔いが残る。渡井理己は「相手の守備が良かった」と振り返った。
「相手のプレスのかけ方やタイミングが、こちらが準備してきた形とはまってしまったというか、うまい形で限定されました」
これはリカルド・ロドリゲス監督も「新潟がうまくプレスをかけてきた」と、分析されて対応された感触を話したが、渡井たちはピッチの中でもちろん対応を重ねていた。だが、反省は残る。
「中盤でもっと距離感を縮めつつ、相手の嫌なところに立ち位置を取れれば、ディフェンスが出てくることができずに間で受けたことが前半はあったので、後半もできればよかったんですけど、難しかった」
徳島の攻撃を警戒し尽くして引きこもる他のチームなら、握り倒して攻め抜く戦いができる。しかし、新潟は同じようにスペイン人監督に率いられ、堂々と攻撃サッカーを宣言し、実行しているチームだ。相対的に、いつもと違うという感覚が渡井には生まれていた。
「支配する時間が短かった分、守備に回った時間が長くなりました。攻撃では前半も後半も何回か決定機があったので、1点入ればなという試合でした」
その1点に大きく近づいたシーンが、渡井にもある。後半に入ってすぐの48分だ。相手陣内に少し入った中盤左で田上大地からボールを激しく奪うと、そのままゴールに向かってドリブルで突き進んだ。右には垣田裕暉が並走してくる。相手は、カバーに入った舞行龍ジェームズだけだ。避けるように少し左に持ち出して左足でシュート!
しかし、GK小島亨介にストップされてしまった。
「いい形で奪えたんですけど、ちょっと舞行龍選手の対応が自分のイメージしていたことと違ったんです。ドリブルでつっかけたタイミングで逆にスペースを与えられて、動揺というか迷いが生まれてしまって。フィニッシュがよくなかったですし、思い切りが足りなかったと思います」
「2対1の形だったので、スペースを消しながらもう少し自分に寄せて来ると思っていたのですが、思ったより来なくて、タイミングがずれたというかイメージと違って、決めなきゃいけないタイミングだったけれど、迷いが生まれたかなと思います」
確かに舞行龍は最初、垣田を警戒してパスコースを抑えながら渡井のドリブルのコースを開けていて、フィニッシュの直前に渡井にぐっと寄せている。細かな駆け引きが繰り広げられていた。
「ワンチャンスを決める質、クオリティーにはこだわっていかなければいけないと思います。難しい試合の中でも崩せたシーンは何回かあるので、そのイメージを頭に残しつつ、自分たちは相手がどういう形で戦うかで変わってくるので、うまく対応しつつ続けて試合できればいいと思います」
自信は失わず、いいイメージを頭に残す。残り13試合に向けて、渡井は昇格のポイントをそこに置いた。
写真◎J.LEAGUE