明治安田生命J2リーグ第29節はアルビレックス新潟にとって重要なゲームだった。勝ち点11差で2位の徳島ヴォルティスににじり寄るための90分。結果は0-0だったが、舞行龍ジェームズは負けなかったことへの前向きな意識を大切にしている。

上写真=舞行龍ジェームズは相変わらず冷静な守備を披露。失点をゼロに抑えた(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月25日 J2リーグ第29節(@鳴門大塚:観衆5,171人)
徳島 0-0 新潟

「割り切る意味では良かった」

 5位のアルビレックス新潟が自分たちより勝ち点を11も多く持っている2位の徳島ヴォルティスに対して、「第29節」という時間軸の中で挑むに当たって、必要だったのは何よりも勝ち点3だった。いわゆる「6ポイントマッチ」はしかし、0-0のまま幕を閉じた。

 センターバックとしてほとんどの試合でプレーしている舞行龍ジェームズは、この日も相変わらず冷静な対応で徳島の攻撃を弾き返し、危険な場面もありながら無失点で抑えきった。勝つこともできなかったが、勝ち点1をポジティブに受け止めている。

「勝ちたかったけど、逆に言えば負けもしなかった。負けていたら本当に(昇格は)厳しかったと思いますし、もしかしたらほぼチャンスがなくなるというところまで落ちたと思います。でも、これでもまだ望みはあります。こういう試合でも失点をゼロに抑えてチャンスも作れていたので、ポジティブにとらえられます」

 特に前半は徳島に自由にボールを動かされ、ゴールに迫られる時間が長かった。やりたいことを先にやられてしまった。だが、それならばそれ相応の対処をすればいい。

「攻撃にはあまり関われなくて何とも言えないですね。割り切って後半は特に(つなぐのではなく)蹴った方が相手が嫌そうだったし、テセさん(鄭大世)が競ってくれていたので、割り切る意味では良かったと思います」

「悪い時間はあったけど、ピッチの中ではそこまで怖いというわけではなく、いいところで受けられてはいたけれどチャンスは作られていなかったので、中では焦れずにやっていこうと話していました」

「なるべく後ろもボックス(ペナルティーエリア)の中に入らないで、高く保とうと話をしていました。ショートカウンターでチャンスを作れていたので、自分はもっとポゼッションしたかったけれど、相手のやり方に対して焦れずに自分たちの守り方はできたと思います

「割り切る」という言葉が象徴的だ。結果を残すために時にはピッチの中で判断して、細かくつなぐことの優先順位を下げて前に蹴り出してから立て直すことも必要だ、ということだ。それができるようになったのは、新潟が正しい成長の過程にある証拠とも言える。

 残り13試合となった昇格レースに向けても、その意識は通底するものがあるだろう。確実に勝ち点を拾っていくために、理想だけに傾倒せず、現実だけに足を引っ張られず、ていねいにバランスを取っていくこと。

「一番に勝負にこだわることだと思います。今日みたいな試合でチャンスがある中で決められなかったことは、あとあと痛くなります。これからはチャンスが少ない試合もあると思うので、そういうときでも1点を取って失点をゼロで抑えて、福岡みたいな感じが必要だと思います」

 この3試合前にアビスパ福岡に敗れたのだが、1点のリードを守り切る終盤になりふりかまわず守備に労力を割いたこだわりに、新潟は屈した。その苦い経験がそんな風に言わせるのだろう。

 ようやく1週間空いて、次節は東京ヴェルディとのホームゲームだ。またも攻撃的なチームとの対戦。次は取りこぼさない。

写真◎J.LEAGUE


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