ジェフユナイテッド千葉で本村武揚が右サイドバックのポジションをつかみ始めている。5試合連続で先発していて、安定感のあるディフェンスで2試合連続完封にも大きく貢献。大きなミスを自分で取り返すという経験も積んだ。

上写真=安定感のあるプレーを披露している。今度は攻撃で輝きたい(写真◎ジェフユナイテッド千葉)

「ビビっているというか」

 本村武揚がジェフユナイテッド千葉の右サイドで輝き始めている。9月19日の第19節愛媛FC戦から5試合連続で先発出場中。与えられているのは右サイドバックのポジションだ。

 9月30日の第23節京都サンガ戦では、尹晶煥監督から試合中にアドバイスが飛んできた。「自信が落ちていて特徴を出す部分が欠けていたので、その部分について話をしました。怒ったわけではないですよ」と尹晶煥監督は試合後に笑わせたのだが、本村自身はこう振り返る。

「もらう位置のこと、つまり立ち位置のことだったり細かいところです。どんどん吸収していければと思います」

「尹さんが求めているサッカーをいち早く理解してそれをやるだけです。言ってくれていることに自分のプレーが追いついていなくて、まだビビっているというか、積極的ではないところが90分で何回かあるんです。そのことについて、話しかけてくれたりアドバイスをもらったりしています」

 ビビっている、というのは、相手の選手の迫力に気圧されて気持ちで負けている…ということではない。「ミスを怖がるか怖がらないか、という意味です」と説明する。

「ボランチやセンターバックからもらうときに、次のパスは前線をファーストチョイスにする考えが大事なんですけど、前を見ないで下げるだけになったことがあって、そうなるとこいつは前を向けないんだなと相手に思われてしまいます」

「プレーを選択するときにいつも、次のことを考えています。このパスを出したらもらった選手は何ができるのだろうか、ということを考えた上で判断します。このパスを受けた相手がもらいづらいものになったり、そこで何もできなくなってしまったら、と考えれば出せなくなります。でも尹さんは、出してみないと分からないし、もしミスになったとしても改善すればいいじゃないか、と言ってくれているんです」

 ルーキーとしては1分1秒がすべて貴重な経験になるが、ミスを取り戻そうとしたシーンはその京都戦にもあった。

 85分の最大のピンチ。右サイドから自身で送ったサイドチェンジのパスがやや弱く、相手に拾われてそのまま一気にドリブルで持ち込まれた。最後は千葉の右サイドに振られて野田隆之介がシュート。その瞬間に足元に飛び込んだのが、GK新井章太ともう一人、本村自身だった。

「もちろん、僕がパスミスして取られなければよかった話なんですけど、でも取られたからには自分が戻らないといけないと思いました。全速力で戻っていって、相手が少しだけためてくれたのでその間に何も考えないでスライディングで突っ込みました。そうしたら、章太さんが止めてくれていました」

 そのあとしばらくピッチに突っ伏したのは、新井のヒザが脇腹に入った痛みに悶絶していたからだというが、野田と新井の間の狭い場所に怖がらず突っ込んでいったのは、自分のミスを自分で取り戻そうという強い意識の表れだった。

 自らのミスから生まれた相手のカウンターによってボールが運ばれた先が、自分の守備のエリアだった、という事実は、もちろん偶然に違いない。野田が完璧な胸トラップからのフィニッシュまでにほんの少しだけ時間を使ってくれたから、スライディングが間に合ったこともそうだ。だが、偶然であっても、ミスを帳消しにできる機会を手にして、実行したのは事実だ。

 全速力で戻らずに、信頼できる味方にカバーを任せるという判断を下す可能性もあった。でも、走った。そして、自分でケリをつけた。もしかしたらそこに、あのミスの価値があったのかもしれない。


This article is a sponsored article by
''.