上写真=トレーニングでしっかりと「見る」ことが選手へのメッセージになる(写真◎KYOTO.P.S.)
自分だけだととんでもないことに
半分冗談? 半分本気?
「ウタカにもっともっと点を取ってもらいたいです!」
J2は9月23日に第21節を消化して、全42節のちょうど半分を終えた。實好礼忠監督率いる京都サンガは、9勝7分け5敗、勝ち点34の5位。昇格圏内との勝ち点差はわずかに9だから、過度なプレッシャーとは無縁で、かつ上を向いて集中して戦うことができるという意味でちょうどよい立ち位置にいると言えるかもしれない。
實好監督は後半戦で一気に昇格へと走りたいチームに求めるものを聞かれて、「ウタカ!」発言となったわけだが、ここまで20試合で15ゴールと得点ランクトップのエース、ピーター・ウタカの活躍を喜びながらも、ここからも着実にゴールを決めてくれれば高みに登れるという思いだろう。
ウタカがゴールをさらに量産し、相手守備陣の目が集まれば、という目論見もあるかもしれない。そうすれば、他の選手が自由になって好調の攻撃をさらにブラッシュアップできるからだ。
「いま攻撃のところのボールの動かし方やパスの距離、そこに関わるポジショニングを整理しながらやっていて、その質も上がってきています。昨日のゲーム(第21節の栃木SC戦)でもハイプレスに引っかけられるところもありましたけど、もっと何もできない時間が続くと思っていたので、選手は落ち着いていろいろな選択肢を持ちながらプレーできています。そこは引き続き質を上げていきたいですね」
1引き分けを挟んで4連勝という上り調子の真っただ中だから、大きな自信を手にしているのだ。
選手選考やターンオーバーも好循環で、それもチーム力を高める要因の一つになっている。
「自信を持って送り出せるメンバーを、といつもそういう思いで選考していますが、自分の頭の中だけで考えると偏るので、コーチ陣とも話しながら決めていっています。自分だけだととんでもないことになるのでね」と笑って話すのだが、スタッフ間の円滑なコミュニケーションが選手たちの正しい見極めにつながっているという自負が伝わってくる。
「選手選考が難しいというのは、どの選手でもしっかりできていることの裏付けでもあります。みんなレベルアップしてきていますしね。だから、トレーニング中でもしっかり見ていますし、それを分かっている選手たちもいつでも行けるという感じで準備していると思いますよ」
「練習では非常に高いレベルの競争が行われているので、悪いから選ばれないということではなくて、パフォーマンスがより良い選手、ポジションの取り方、特徴、ハードワークできるかどうかなど、総合的に見ながら決めているので、みんなアグレッシブにやってくれていて、高いレベルでできています」
こんな風に言われれば、選手も競争に真剣になるに決まっている。
残り21試合。J2は魔境と言われるから何が起こるか分からないが、少なくともいまの京都はしっかりと落ち着いて深く深呼吸しながら、昇格へのパワーを蓄えているようにも見える。