上写真=大宮戦で先発フル出場を果たした福岡の前寛之(写真◎J.LEAGUE)
■2020年9月16日 J2リーグ第9節(観衆1,880人/@NACK)
大宮 0ー1 福岡
得点:(福)フアンマ
特別な思いをもって試合に入った
その瞬間、前寛之は左サイド深くまで進入した。本人によれば「珍しいプレー」だが、65分、ボックス左脇に入り込み、そして鋭いクロスを送った。
相手のディフェンスラインとGKの間を突く、速いボール。フアンマがドンピシャで合わせて、ゴールが生まれた。結局試合はこの1点で決着。チームの4連勝を導くアシストになった。
「前半にも同じようなシーンがありましたが、そのときは前方には出ませんでした。後半の最初に攻撃が停滞していたところで良いタイミングで輪湖(直樹)選手がパスをくれて、良いところにフアンマがいて、得点ができました。
あそこへ僕がランニングすること自体は珍しいと思いますけど、前半に輪湖選手にサポートがないと感じていて、輪湖選手とも話していて、タイミング的に僕がランニングできる瞬間だったのでスペースに走った感じでした」
前の状況に応じた選択が、ゴールを生んだと言える。9月5日のレノファ山口戦で復帰して以降、福岡は4連勝。当然ながらチーム全員で勝利をつかんでいるが、アシストのような目に見える結果以外にも、前のプレーは攻守両面で効いている。この日は守備でも相手の大砲イバにボールが入った際にはDFと連動して挟み込み、何度もセカンドボールを回収。長谷部茂利監督もプレーぶりを称えていた。新型コロナウイルスの陽性反応が出たことで一時、戦列を離れることになったが、復帰後の活躍には目覚ましいものがある。
この日の大宮戦には、本人も並々ならぬ思いを持って臨んでいた。
「(大宮戦は)少し前に行なわれる予定(8月2日)だった試合で、僕のところで、新型コロナウイルスの影響で延期になってしまい、特別な思いがありました。そのときにスタジアムに来てくれていたサポーターの方々や、試合に向けた準備に携わっていただいた方々に対して申し訳ない気持ちがすごくあり、そういうことも考えながら入った試合でした」
その思いは縦横無尽にピッチを駆けた前の全力プレーに表れていた。9月無敗のチームをけん引するキャプテンは、言った。
「勝てたことは良かったです。ただチームとしても、個人としても、終盤に引き込む形になってしまったのは改善点だと思っています」
ただ、連勝を喜ぶだけでは終わらない。結果によらず、1試合ごとにしっかり反省して次に目を向けている。特別な試合を終えて、気を引き締めた。
連戦はまだまだ続くが、キャプテン前にこの姿勢がある限り、福岡の成長が止まることはないだろう。