上写真=荻原(右)に先制ゴールを祝福される。今季7点目はチームトップでリーグ5位タイだ(写真◎J.LEAGUE)
■2020年9月9日 J2リーグ第18節(@フクアリ:観衆2,030人)
千葉 1-3 新潟
得点:(千)クレーベ
(新)渡邉新太、本間至恩2
「満足せずに次は2点決めたい」
チーム得点王・渡邉新太の今季7発目は、再出発を象徴する約束の一撃だった。
前節でジュビロ磐田に1-3で完敗し、アルベルト監督も「後半は今季一番良くなかった」と認めるしかなかった出来。選手同士によるミーティングの開催も促され、引き締め直したあとの大事なゲームだった。ここで連敗して、J1昇格に向けて積み上げたものを壊すわけにはいかない。いわば、このシーズンにおける大きな大きな転換点となるゲームだった。
23分の先制点はだから、ただのゴールではなかったのだ。
中盤でボールが行ったり来たりする難しい状況で、福田晃斗が体を投げ出すようにして足で触ったボールが本間至恩のもとに届く。すかさずドリブルで前に進むと、その左側を並走した渡邉に預ける。ワンツー狙いで裏に走った本間に相手DFが引きつけられると、わずかにスペースができた。目の前にDFが立ったのだが、その甘さを突いた。
「ディフェンスがあまり寄せてきていなかったのと、まだ前半だったのでまずシュートを1本打っておきたかったんです。だからコース狙って打ったら入って良かったですね」
喜び大爆発! にはならないのが、身につけ始めた風格のなせる技だろうか。「少し足元にボールが入って、本当は右隅に決めたかったのはありますけど、うまくすくい上げる形で蹴って入って良かったです」と右足インサイドでボールに回転をかけてGKの頭上を巧みに抜いたシュートテクニックを冷静に振り返った。チームが倒れてもおかしくない難しいゲームで決めたこの先制点は、まさにエースの証明だ。
これまでは、2トップの一角に入ったとしても最前線のエリアはパートナーに任せて、右に左に大きく動き、仲間に近づいて助けていくのがスタイルだった。しかし、この試合はそれも抑えめ。狙いがあるはずだった。
「監督にも深さを取るように、ということは言われていて、落ちてこないでボックス内で仕事をしてほしい、ということだったので、中盤での仕事は減らしてしっかりチャンスのときに前にいたかった」
大きな動きも魅力だが、2トップの相棒、ファビオとともに下がらずに前線に立ち続けることによって相手DFの動きを止め、ラインの押し上げを阻止していた、というわけだ。これで自分たちがプレーできるスペースをあちこちに生み出すことができた。それが、渡邉自身が左サイドに抜け出してカットインしながら横パスを送ってアシストした、53分の本間至恩の追加点につながっていく。
そして、前節の苦しい戦いから一転、自分たちの目指すサッカーを十二分に表現できた、という実感も大きい。
「チームとしては90分、ボールを握れて、中盤でも負けませんでした。ボールを動かすことは勝利に近づくポイントだし、目指しているところなので良かったですね。自分としてはFWなので結果が大事。それを残せたことは良かったです」
「でも…」と欲張るところが頼もしい。
「今日の展開ではもう1点ほしかったところもあるので、満足せずに次は2点決めたいと思います」
この日、2得点でヒーローになった本間への小さな対抗心だとしたら、この人らしい。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE