明治安田生命J2リーグ第17節で、愛媛FCは東京ヴェルディを1-0で破って今季4勝目を手にした。丹羽詩温のゴールをアシストしたのが、ジュビロ磐田から期限付き移籍でプレーしている森谷賢太郎。川井健太監督が託しているものとは。

上写真=新天地となる愛媛で攻撃のタクトを振るう森谷。川井監督からの信頼は絶大だ(写真◎J.LEAGUE)

■2020年9月5日 J2リーグ第17節(@味スタ:観衆1,781人)
東京V 0-1 愛媛
得点:(愛)丹羽詩温

「相手に触られないように」

 東京ヴェルディを沈黙させた一撃は、17分に生まれている。清川流石からサイドチェンジのロングパスが右サイド奥に届き、西岡大志が受けてバックパス、森谷賢太郎が完璧なクロスを送ると、丹羽詩温が豪快なボレーシュートを突き刺したのだ。

 川井健太監督は「素晴らしいシュートだったが、森谷のパスもすごかった」と褒め称えた。森谷はパスのパワーを左足のインサイドで優しく手懐けるようにしながら少しだけボールを前に出し、右足のインフロントで絶妙なカーブをかけ、糸を引くようなクロスを送ってみせた。

 決めた丹羽とは相性の良さも感じさせていて、第14節の大宮アルディージャ戦でも8分の丹羽の先制ゴールをお膳立てしている。こちらも森谷らしいテクニックが生かされたもので、左寄りの位置で受けて前を向くと、少し緩やかに浮かせるように足首に入れる力を調節してその胸へ届けるおしゃれなパス。丹羽はワントラップから豪快に右足を振り抜いて決めたのだった。

 大宮戦でも東京V戦でも、一連の技術はさすが、横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、ジュビロ磐田とJ1の強豪クラブで磨いてきただけのことはある、と思わせるものだった。

 今季はその磐田から1年間の期限付き移籍で愛媛でプレーする。契約の関係で移籍元の磐田戦で出場できなかったが、それ以外のすべての試合で先発出場を続けているのは、間違いなく川井監督の信頼の証だ。

 愛媛は主力の移籍もあってなかなか結果が出ていないが、川井監督が毎年、ボールを大切にして丁寧につないでいくサッカーを展開している。今年もオフに近藤貴司が大宮に移籍、神谷優太も期限付き移籍期間満了でチームを去ったが、そのマイナスを補うために補強された一人が、森谷だった。

 東京V戦では2トップの一角に入って、相棒の丹羽の周りを漂うように動き続けた。DFが飛び込めない距離感でふわふわと相手選手の間を移動して、相手にとって危険な場所で決定的な仕事をしようと狙っていた。それはまさに、川井監督が期待を寄せていることである。

「森谷に求めているのは、相手に触られないようにすることです。技術が高い選手なので、相手の時間を止めるようにと言っています。もちろんスピードアップするところもありますが、その部分の彼の良さも出ましたし、運動量も豊富なんです。求めているのは全体のコントロールを、ボールを使ってやってほしい、ということです」

 相手に触られない場所に立ち、相手の時間を技術によってストップし、ボールを使って全体をコントロールする。これぞまさに、プレーメーカー。川井監督が目指す愛媛のフットボールは、森谷のセンスによって完成へと近づいていくのだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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