上写真=「地元」北九州戦では61分からプレー。次はゴールを!(写真◎J.LEAGUE)
「試合勘はあともうちょいですね」
J2第14節は、故郷のクラブ、ギラヴァンツ北九州戦だった。ケガから復帰して2試合目の出場となる大久保嘉人は、一回り体が大きくなったようだった。「みんなにそう言われるんですよね。離脱中に結構、筋トレしてたんですよ。太りやすいから体幹もやって」。なかなかのガチムチボディで61分にピッチに入ると、ますます盛んなゴールへのギラギラを隠さずに、7連勝中で2位のチームに向かっていった。
「センターバック2枚がオレを見ていれば前に出てこないので、その2人を引き出さないように前に残るように、という感じでしたね。逆にオレが中盤に下がればセンターバックがついてきて、スペースが空かなくなるので」
相手を「ピン留め」する役割を与えられたのだが、ピッチに入る直前に追加点を決められた。だからもちろんミッションはゴール。自分ではシュートは打てなかったが、周りがプレーしやすいように意識した。しかし、残念ながらスコアは動かずに敗戦。
こういうときに若手の多い仲間たちへ改善を促すことも、百戦錬磨の男に期待されていることだ。
「みんなゴール前で焦っちゃうというか、雑に行ってしまうところがあって、それで取られてカウンター、というのが多いですね。行けるかもしれないけれど、ディフェンスが戻ってきているから一回待とう、とか、むしろ一回相手を戻そう、というのも大事です。相手が戻ってきた方が崩せるしシュートは打てるんだけど、そこが見えなくて攻めに行っちゃって取られて、が多い。自分が試合に出て、そこを伝えていきたいというのは感じていますね」
「北九州はきっちりディフェンスしようとしっかり戻ってきましたけど、頑張ってくるチームはやりやすさがあるんですよ。真面目なチームほどスキがある。そこをうまいこと使いながら行けばいいのにな、というのは、(ケガのためにスタンドから)見ていたときも少しもったいないな、仕留められたのにな、と思っていて」
「そういう、使う、ということをやらないと難しいんじゃないかな。それでリズムができれば向こうは消耗するわけで、試合の持っていき方が簡単になってくる」
積み重ねた経験から、いろいろなものが見えるのだろう。78分、相手DFラインの前にできたスペースに立ち、藤田譲瑠チマの素晴らしい縦パスを受けて優しく落として、佐藤優平の強烈なミドルシュートを導いた。直後に拍手を送った。
「あれはジョエルに対してだったんです。(自分に)あのパスを出せたことに対してね。お、これ出せるんだ、それだよジョエル! っていう意味で」
試合中にみんなが見ているピッチの上で一流選手から称賛される。藤田はうれしかっただろう。
「試合に出続けることで、どんどん良くなってます。だから心配していないですし、ああいうパスをどんどんつけられるようになれば、海外に行ける選手になりますよ」
いいプレーをすれば、若手を真っ直ぐに褒める。東京Vが大久保を獲得した意味が、こういうところにも感じられる。
さて、次は自分に拍手を贈る番だ。
「この前の試合でようやく、(ケガの再発を防ぐための)時間制限が解除されたので本当に良かったです。試合勘はあともうちょいですね。徐々に上げていってみんなに合わせますよ」
アルビレックス新潟が鄭大世を、大宮アルディージャがイバを獲得し、J2ではベテランストライカーの意地に注目が集まっている。
大丈夫、緑のクラブには大久保嘉人がいる。