上写真=再開後、着実に勝ち点を積み、チームを5位まで上昇させている東京Vの永井秀樹監督(写真◎J.LEAGUE)
小嶺門下生の先輩。伸二さんはすごい
永井監督は大分、ギラヴァンツ北九州の小林監督は長崎。ともに九州出身で、高校は永井監督が国見で、小林監督は島原商業。年齢は永井監督が10才下だが、二人は小嶺忠敏監督が高校時代の恩師という点で同じ遺伝子を持つ指導者と言えるかもしれない。
「小嶺門下生の第1期に近いですよね、小林伸二さんは。前橋育英の山田(康介)先生もそうですが、門下生の中でも伸二さんは大先輩。そんな先輩が、本当にいいチームを作っている、すごいと感じています。
やっぱり人心掌握術というですか、そこはすごい。どんなに優れた戦術を持ってきても、ロボットがやるわけじゃないので、選手が理解してやってくれない限りできませんから」
現在、北九州は7連勝中。その戦いぶりはアグレッシブで攻から守、守から攻の切り替えの早さは特筆には値する。その戦いぶりについては、弊サイトの連載『Jを味わう』の第5回でも取り上げたが、昇格請負人として数多くの実績を残してきた旧来のイメージの小林サッカーではない。そして、永井監督はその点こそを称賛した。
「本来持っている(小林監督が手掛けるチームの)守備の素晴らしさに上積みして、攻撃をバージョンをアップしている。サッカーの発展スピードが早い中で、『サッカーはこうじゃなきゃいけない』ということではなくて、どんどんバージョンアップしている。指導者というのは、そういうことが必要なんだなというのを、伸二さんの姿を見て改めて感じていますし、学ばなければいけないと思います。
あれだけの実績があって、経験もあってとなれば、一つ間違えると、どこがで慢心して『俺のやり方でやっていれば間違いない』となりがちですが、やっぱりいくつになっても、どれだけ経験を積もうと、サッカーを学ぶ姿勢や、もっといいチームを作ろうという向上心がある。本当にすごいと思います」
指導者としてのあるべき姿を示す先輩に抱く尊敬の念を素直に口にし、そして恩師を同じくする者として一つのエピソードを披露した。
「小嶺先生からもそういうところを学びました。高校の時に、先生がブラジルに2週間、いきなり行ってきて、『向こうではダブルボランチってのをやっているんだ』ということで、採り入れようとしたり、いくつになってもそういう姿勢が大事だなと、伸二さんの姿を見て改めて思いますし、サッカーに正解がいないというのを分かっている中で、慢心せず、変わり続けて、指導者も勉強し続けなければいけないということを強く思います」
先輩指導者との対戦を前に思いを語った永井監督だが、勝負となれば話は別だ。好調北九州の攻略法については、すでに選手たちに伝え、準備を進めていた。
「北九州は帰陣も早いですし、守備は非常に整備されている。ボールプレッシャーも早いし、プレー強度も高い。そして攻撃は5レーンではなくて、6レーン。われわれにとっては非常に脅威ですし、そのあたりをうまく見ながら、相手の穴を探りながらいい準備をして臨みたいと思っています。
守備に転じた際のプレスの速さは十分に理解しているつもりなんで、それを上回っていけるようにやっていきたい」
東京Vは現在、5位。北九州は2位。勝ち点差は8ポイント。勝てばその差を詰められる。
「(北九州が)やろうとしていることは非常によく理解できますし、実際にそれができているチーム。いいチームだなというのは見れば見るほど感じるところですが、ある意味で、われわれが成長できてきているこのタイミングでやれるのは、非常に楽しみです」
永井監督自身が楽しみと語る試合は、今季のJ2屈指の好カードとして期待されている。結果はもちろん、その内容にも、注目せずにはいられない。