上写真=再開後フルタイム出場を続ける平。鉄人センターバックが支える(写真◎Getty Images)
「疲労感は相手よりない」
左利きのセンターバックは珍しく、だからこそ貴重で魅惑的だ。東京ヴェルディの平智広もその一人。今季は再開後の8試合すべてにフル出場していて、これは若狭大志と2人だけである。
「監督からの信頼の厚さ…というか、自分は試合に出たら役割を1試合1試合こなすことしか考えていなくて、競争は日々あるのでいつ出られなくなってもおかしくないと思っているんです。このチームにはほかにも実力のある選手がたくさんいるし、僕もまだまだです」
危機感は常にマックスだが、再開後8試合で失点は7。1試合1点以下と安定している。
「失点が少ないので守備は安定してきていると思います。その意味では、守備陣全員としての評価をもらっているとは思っています。でも自分は前につけるパスやサイドチェンジが課題で、そこを増やして起点になれるパスを供給できたらいいと思っています」
派手なパスワークやコンビネーション、華麗なドリブル突破に注目が集まるが、それ以外の部分にこそこのチームの魅力が隠れているのだと教えてくれる。
「全体的に守備の意識が試合を重ねるごとに高まってきています。攻撃がメインに思われがちですけど、守備についてしっかり厳しく言い合って全員で守備の意識を高めようとしていて、それが結果に表れていると思います。攻撃陣もファーストディフェンダーになって連動して守っていこうよ、と」
だから、ボールを持っているときと同じように、失ったその一瞬に注目してみると、さらに東京Vのサッカーを楽しめるということだろう。
攻撃面では、すべてドローのここ3試合はセットプレーによる1得点のみで、自慢のアタックに少し元気がないようにも見える。ただ、得点には至らないまでも攻撃の思想こそが守備に多大な影響を与えていると実感している。
「暑い中での試合になるので、ボールを持たれている側のチームの方が精神的にきついと思うんです。カウンターを食らうところではスプリントが増えますけど、ボールを保持しながら支配していく意識でやり続けていけば、1試合を通しての疲労感は相手よりはないのかなと」
永井秀樹監督はゴールを奪うところから逆算した上でボールを保持するスタイルを選択しているが、これが守備陣から見てもディフェンス面で優位に立つために理にかなっているというわけだ。
「チームとしては回し方が整理されている中で、判断を迷うシーンがなくなったというか、ミスが減ってきていると思います」。だから容易に失うことはなく、守備陣としても安心して見ていられるというのだが、「打てる場面で打たずに奪われてカウンター、というパターンが何回かあります。監督からはシュートとラストパスの二つの選択肢を常に持つことが相手の脅威になるということを求められています」と、まだまだブラッシュアップする余地は残っている。
ただ、次から次に試合がやって来るスケジュールは、改善のためには都合がいいかもしれない。次の相手はFC琉球。「攻撃的なチームだと思うので、守備陣としては警戒するチームです。でも逆に言えば、攻撃でもっともっと支配できれば相手はすごく嫌になるんじゃないかなと思います」。相手の攻撃性を逆手に取って攻め続ける。そのミッションを実現させるために、平は後ろから仲間を支え続ける。