上写真=本人も驚くほど先日の試合で「走って」いた林(写真◎ザスパクサツ群馬)
どこに、いかに走るか
「走る距離も11.6キロだったんです。FWでそんなに! と思いましたよ。ヴェルディ時代もそんなにいったことはほぼなかったですね」
もう長いこと、プロとして一線で体を張ってきた林陵平自身ですらも、驚きのデータだった。クラブが測定している走行距離がそんな数値を叩き出すとは。確かにJリーグが公式サイトで発表している試合別走行距離(J1のみ/第4節終了時点)で、12キロ以上走っている上位20人のうち、FW登録は湘南ベルマーレのタリク1人だけである。
第4節終了時点で4連敗、最下位に沈むザスパクサツ群馬としては、FWであっても守備への貢献が他のチーム以上に求められてくる。それをこなした上で、ゴール前でも勝負するという困難なタスクに挑んでいるところだ。ただ、根拠のない根性論に近いような形で、過度な負担を誰かに集中させることに意味がないことを分かっている。
「ゴールを取れないのはFWになので責任を感じています。その中で、サッカーは一人でやるものではないですし、みんなでボールを運んで人数をかけていくことで、フリーになったりチャンスになったりするわけです。そういうシーンが明らかに少ないですね」
「やっぱりシュートチャンスをたくさん作り出すのが大事です。決まるかどうかは置いておいて、チャンス自体が少ない。自分自身もいろんなタスクを負いすぎていて、どちらかというとフィニッシャーの自分を出したいところがあります。いまは左サイドからの攻撃が多いですけど、クロス上がったところに自分一人しかいないときもあって、ここに2〜3人が関わってくると相手は怖いし、セカンドボールを拾えれば2次攻撃も仕掛けられます」
そのための具体策として挙げたのが、「3」という数字だ。「クロスに対して逆サイドサイドハーフが入ってくること、そして2人のボランチのうち1人がゴール前に入ってきてほしいですね。飛び込んでくれば相手を引きつけることができるので、ペナルティー・エリア内に3人は入ってほしいと思います」
もちろん、林自身は走ることが苦なのではない。「走れないキャラでもないし、走れると思っています(笑)。どのぐらいの距離を走るかも大事ですけど、やっぱりどこに、いかに走るかも大事なので、そこは効率を上げて歯車を合わせていきたい」と、論理的なランニングを志向している。
そもそもが冷静で不必要に感情的にならないタイプ。「負けが込んでくるとイライラが募ってしまいがちだけど、僕はそんなに味方に当たることはないです。分析して、こういうときはこうではないかと話をして、相手の意見もしっかり聞いて、ディスカッションしていく形が多いです」と落ち着いて問題を解決する思考の持ち主だ。
その点では、次節のモンテディオ山形戦にもフラットな感情のまま入っていけそうだ。「山形はいい相手ですし、勝利のために戦いますが、現状ではまずはアウェーで勝ち点1を取ることもチームにとっては大事なことです」
一方で、感覚的なものも大事にしている。苦しい状況を打破するきっかけになることが多いのは、セットプレー。どんな相手とも五分五分の状態でゴールを狙っていけるわけだから、いまの群馬には貴重なチャンスになる。
「セットプレーは試合前日はみっちり2時間、練習しています。試合で点を決めるためにね。僕自身は、ボールが来そうなところに感覚で入るのが好きなんです」
論理的感覚と感覚的論理。この両方を携えて、林は次の試合もピッチに立つ。