上写真=同点ゴールでチームに勝ち点1をもたらした太田(写真◎J.LEAGUE)
■2020年6月27日 J2リーグ第2節(@中銀スタ)
甲府 3-3 新潟
得点:(甲)ドゥドゥ2、太田修介
(新)渡邉新太2、シルビーニョ
「とっさに胸が反応しました」
第4の審判員によって掲げられたアディショナルタイムの表示は「6分」。2−3のスコアで1点を追いかけていたヴァンフォーレ甲府にとっては、願ってもない時間だったに違いない。
アルビレックス新潟に先制され、前半のうちに逆転したものの再逆転を食らう苦々しい展開だった。伊藤彰監督はスピードと技術を兼ね備えるジュニオール・バホスとドゥドゥのコンビを下げ、62分にハーフナー・マイクを、72分に金園英学を送り込んだ。身長194センチと184センチのツインタワーだ。
「マイクとゾノさんの2トップになって、分かりやすい戦いになりました」。こう話すのは、自らも62分から途中交代で入っていた太田修介だ。
「だから、2人の近くにいればこぼれてくると思いました」。まさにそのとおりの結末が待っていた。
ツインタワーを出現させてからの甲府は、容赦なかった。何の躊躇もなく、ロングボールを放り込んでいく。相手ゴールに近いエリアでエアバトルを仕掛けて何かを起こす。割り切ったら、あとは遂行するのみだ。じわり、じわりと新潟守備陣を押し込んでいく。そして、その時は来た。
公式記録では90+4分のことだった。左サイドで内田健太がロングスロー。ニアで金園が競り勝ちヘッドで中に送ると、そこには太田。体を投げ出すようにして胸の左のあたりにボールを当てると、スーッとゴールに吸い込まれるように入っていった。
「勢いを持って飛び込んでいったので、ボールが中途半端なところに来て、どうしようかなと思ったらとっさに胸が反応しました。どこかに当たって入ればいいと思って。もう決めるという気持ちだけでした。1点が欲しい時間帯だったので枠の中に入れたいという気持ちでした」
最後は気持ちを強調したJリーグ初ゴール。プロ3年目、リーグ戦6試合目での達成には「うれしい気持ちはありますけど、遅いなと思っています。うれしいはうれしいけど、そんな感じです」とそっけなかった。
それは自信の裏返しだろう。この試合では右サイドでプレーしたが、中央でも勝負できる。「いろんなポジションができた方が過密日程で多く出場できると思います。チームとしてもそういう選手がいたほうがいいですし、どこのポジションでも結果を残せる選手になりたい」
甲府のアカデミー出身のローカルスターが、中断明けの最初のゲームといういわば歴史的な一戦で踏み出した大事な一歩。さあ、スタートだ!
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE