6月13日、埼玉スタジアムに乗り込んで、浦和レッズとの練習試合に臨んだのはFC町田ゼルビア。30本×4本を合計2-1として勝利を収めたが、特に1本目の鋭さは浦和を圧倒するものだった。中でも見事だった先制点を生み出したコンセプトとは?

上写真=試合後に充実の内容を振り返った平戸太貴(写真◎スクリーンショット)

〈1本目の先発メンバー〉

画像: 〈1本目の先発メンバー〉

■練習試合:浦和レッズ対FC町田ゼルビア
・30分×4本(0-1、0-1、0−0、1−0)
 合計スコア:浦和1−2町田
 得点者:【浦】武藤雄樹(4本目20分)
     【町】高江麗央(1本目10分)、安藤瑞季(2本目29分)

「びっくりするぐらい走れていた」

 ランコ・ポポヴィッチ監督はもとより笑顔が魅力の好漢だが、浦和を2-1で下した練習試合のあとも気持ち良さそうに笑った。

「この試合を通じて、自分たちがいま、どの位置にいるのかをしっかり計りたかった。やるべきことができた部分もあり、今日選手たちが見せることができたものに非常に満足しています」

「特に1本目は非常にコンパクトになって、オーガナイズの部分でもしっかりできていました。やってきたことが出せたと思います」

「気温が上がらず小雨だったのも良かったと思いますが、選手の体も動いていて、コンディションの面ではびっくりするぐらいに走れていたし戦えていました」

 もちろん、まだ準備段階に過ぎないから、手放しで喜ぶ、というところまではいかなかったが、それでも主導権を握りながら1-0とした1本目、やや押し込まれながらもスコアは同じく1-0でまとめた2本目ともに、十分な手応えを感じさせるものだった。

画像: ポポヴィッチ監督も笑顔で振り返った(写真◎スクリーンショット)

ポポヴィッチ監督も笑顔で振り返った(写真◎スクリーンショット)

同じ絵を描けている

 町田はコンパクトでシュアな4-4-2のフォーメーションを崩さず、同じ布陣を採用しながら調整途中の浦和にその機能美を見せつけることになった。守備ではどのエリアでも出足の鋭さを損なわずに相手の自由を奪い、攻撃では2トップの巧みな連動とサイドハーフの上下動をベースにして優勢に立った。

 象徴的なのが2トップの一角に入った平戸太貴で、ややルーズな浦和の最終ラインと中盤の間で漂うようにフリーの状況を作ってポイントになり、ボールを引き出して攻撃をコントロールしていた。

 平戸自身も攻守に渡って及第点を与えている。「1本目は守備ではしっかり前から奪いに行くところ、セットしてサイドで限定して奪うところ、攻撃では奪ったところから少ないタッチ数で攻める形、ボールを握りながら相手の穴を探す形ができました」

 特に1点目はこのチームの意図をしっかりと表現した素晴らしいゴールだった。左からのジョン チュングンのクロスがこぼれたところを高江麗央がミドルシュートで鋭く差し込んだものだが、その一連の流れはお手本通り。左サイドのハーフウェーライン付近で浦和の組み立てを複数人で連動してじわりと外に追い込み、奪った瞬間に前向きにボールを動かすと、そこから10タッチ(相手ブロックを除く)、わずか13秒で仕留めてみせた。

 もちろん、反省もある。「2本目はなかなかボールのところに行けずにサイドを突破されたり、低い位置で奪っても逆に奪い返されて、攻めに出られないことが多かった。ボールホルダーにアタックする部分と、奪ったときにもう一歩、二歩とサポートに入れれば良い攻撃にできたはずです」

 この悔恨はセンターバックに入った水本裕貴も同じ考え。「開幕前から築き上げてきたものに積み重ねた部分はありました。攻撃で少ないタッチで運ぶことができていましたから。ただ、プレッシャーが掛かったときにボールロストが多かったのも確かです」

 攻守の要が同じ反省点を指摘する。それはこのチームが同じ絵を描けている、何よりの証拠ではないだろうか。


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