上写真=選手たちの動きが良かったと話した高木監督(写真◎zoomスクリーンショット)
普通じゃないと覚悟してやっていく
久々の全体練習はたっぷりと。午前と午後の2部構成。いきなりハードな内容でリスタートを切った。
「(地方のクラブに比べて)大宮アルディージャを含め、首都圏のチームはスタートが少し遅れたと思いますが、そういう中でも手応えというか、選手の動き、体に関してはよかったと思います。それは自主トレから再開に向けての準備を怠っていなかったということ。その点で感触はよかったですね」
高木琢也監督は約2カ月ぶりのチーム・トレーニングについて、そう振り返った。
「こういう日を迎えられたということに、クラブ関係者や選手たちの努力も含めて、非常に感謝しています。以前は普通にできたことが今はできない状況。そういう難しさを感じています。やはり再開したときにチームとしてそういうことを意識しながら、チームの目標であるJ1昇格を成し遂げたい」
これだけ長い中断期間も、夏場の連戦も、初めての経験となる。ただ、それを嘆くのではなく、しっかり受け止めて準備して、リーグ戦に臨むことが重要だと指揮官は話す。選手に対しても心構えを説いたという。
「今は世界的にもあまりにも普通ではない状況で、再開まで約3週間、1カ月もない状態ですが、それも含めて今は普通じゃないんだということ。そこは覚悟して僕もやっている。選手にもそのことは言っています。いろんなことに対抗していこうと。それしかないと思うんです。(準備期間が)少ないとか、多いとか考えていたら、何もできない。与えられた時間の中で逆に今までとは違う形で選手たちにアプローチして、いろんなことを伝えていかなければいけない。自分の中でも試行錯誤して、今までにないことができるんじゃないかと思っています」
すべてを受け入れ、「普通じゃない」状況の中でいかに前進するか。指揮官はその「覚悟」を口にした。
交代枠5人で大きな変化があると思う
再開後のJ2はこれまでない超過密日程になる。その上、ピッチ内でも新たな対応が求められる。「普通じゃない」状況は、ピッチ内外でいくつも訪れるだろう。
たとえば、今季の限定で採用が決まった「交代枠5人ルール」によって戦い方にも大きな変化が起こると予想される。先日、日本サッカー協会の反町康治技術委員長は、「今年のJリーグは監督の手腕が問われる。交代枠5人ルールをどう使うのか。どう対応していくのか、興味がある」と話していた。
監督としても何度も対戦経験がある反町技術委員長の指摘について、つまりは5人枠についてどう考えているのか、高木監督に聞いた。
「当然、5人枠になるということはかなり大きな変化があると思うので、そこは考えてはいます。ただ、どういうふうにしたらいいのかというのは、実際やってみないというところもあります。暑さとか、雨が降っているときなのかとか、アウェーなのかホームなのか。対戦相手のチームが3枚、4枚代えてくるときに中心選手が入っているのか、孫子の兵法で言えば、いくつかの条件を踏まえて、対応をしっかり見ていく中で、5人の枠を使っていかないといけないと思います。
たとえば前からどんどんプレッシャーをかけてきて、後半に前線の3枚、4枚を代えたりとか、そういうことも考えれます。そもそも今のサッカーで言えば、(並びが)3枚でも4枚になったり、4枚でも3枚になったりとか、かなりゲームの中で変化する時代にはなっていると思います。そういうことを(攻撃なら)より強く出すとか、(守備なら)より止めるためにとか、いろんな変化に対応できるように自分たちもなっていかなければと思っています」
その言葉からは指揮官があらゆる状況を想定し、考えを巡らせていることが伝わってきた。
プロサッカーチームを率いる上で、試合に臨む上で、そしてJ1昇格という目標に向かう上で、乗り越えるべきものがいつも以上に多いシーズンになるのは間違いない。6月27日に再開まで3週間。高木アルディージャは対応力を磨き、準備を尽くしてリスタートに臨む。
取材◎佐藤 景