この連載では再開後のJリーグでさらなる活躍が期待される各クラブの注目選手を紹介していく。連載第20回はアビスパ福岡の新戦力で、今季開幕戦でいきなりその力を示したFW、遠野大弥について綴る。

上写真=今季加入した遠野。北九州との開幕戦でその持ち味を発揮した(写真◎J.LEAGUE)

文◎北條 聡 写真◎J.LEAGUE、AVISPA FUKUOKA

値千金の決勝ゴール

 迷いが、ない。

 受けたら前へ。持ったら前へ。さばいて前へ。とにかく、敵のゴールに向かって、ぐいぐい突き進む。その外連味なき躍動感はブレイクの前触れかのようだ。

 遠野大弥、21歳。

 J1昇格を狙うアビスパ福岡の新しい斬り込み役である。今季JFLのHonda FCから川崎フロンターレに加入。そして、期限付き移籍で福岡の地にやって来るなり、大仕事をやってのけた。

 開幕戦で値千金の決勝ゴールだ。

 ペナルティーエリア内での混戦から放った会心の一撃。それも今季からJ2に昇格してきたギラヴァンツ北九州との「福岡ダービー」でのことだった。スタメンはもとより、主役の座までつかみ取ったのだから恐れ入る。初挑戦のJリーグで堂々たるデビューを飾ってみせた。
 
 役どころは巨人ファンマの周囲を旋回するセカンドトップ。そこから勢いよく突っかけていく。その姿は攻と守の両面でアグレッシブに前へ出る新生アビスパの申し子のようだった。長谷部茂利新監督がいきなり開幕戦でスタメンに抜擢したのも納得がいく。

 今季の福岡は長谷部新体制の発足に伴い、陣容を一新。開幕戦のスタメンもチームの新キャプテンに任命されたボランチの前寛之をはじめ、実に8人が新戦力だった。まだチーム戦術の刷り込みは十分ではない。それでも攻守を問わず、チーム設計の狙いが随所に見て取れた。

 繰り出したシュートの数は北九州の二倍に当たる15本。このうち、チーム最多の6本を放ったのが遠野だった。指揮官が求める縦への速い仕掛けを繰り返した証でもある。いや、それ自体がこの人の持つ強烈な個性、大きな強み――と言い換えたほうがいいかもしれない。

 Honda FC時代からそうだった。

 昨季の天皇杯で遠野とその仲間たちが次々とジャイアントキリングを演じ、旋風を巻き起こしたのは記憶に新しい。そこで遠野は3戦連発4得点の大暴れ。その縦横無尽の活躍がJのスカウト群の目に留まり、川崎Fに引き抜かれる契機となった。確かな才能を認められたわけである。


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