上写真=会見では自身の特長として足元の技術を挙げたクリャイッチ(写真◎BBM)
日本に来ることに迷いはなかった
J1昇格を目標に掲げる大宮の高木琢也監督は、新シーズンのテーマとしてビルドアップの改善と得点力を掲げている。足元の技術が一番に自信を持つクリャイッチは、そんなチームの狙いを体現できると守護神だろう。補強した外国籍選手について話す際に、指揮官はこんなコメントを残している。
「ディフェンスに関しては高い位置から(ボールを)取るということは(新シーズンも)変わらないと思います。ディフェンスに関しては個人のキャラクターが大きく反映できるようなものではないので。ですが攻撃に関してはキャラクターがすごく出てくるもの。そこは新しい選手たちと既存の選手たちのかみ合わせというか、特徴を出していければ、昨シーズンとはまた違うものが出せる」
得点源として期待されるネルミン・ハスキッチとともに、攻撃の第一歩を担うGKとして活躍が期待されているのが、パルチザン・ベオグラードから加入したフィリップ・クリャイッチだ。
7年間在籍したセルビアリーグのパルチザン・ベオグラードを離れ、初めてJリーグに挑む。2017-18シーズンにギリシャのAOブラタニスでプレーした経験があるものの、今回のチャレンジ場所はヨーロッパの隣国ではなく、古郷セルビアから遠く離れたアジアの国だ。ギリシャでプレーするのとはわけが違う。大きな決断を下した理由について、本人は強い口調で言い切った。
「前のチームには7年間、所属していました。その中で新しいものを見たい、新しい国で挑戦したいという思っていたとき、大宮からお話をいただいた。日本に来ることに迷いはなかった」
年齢は29歳で、キャリアも相応に重ねてきたが、本人はまだまだ成長できると自身の伸びしろを強調する。
「まずはチームメイトの特徴を知ることから始めないといけない。キャンプが終わるころにはその特徴も分かって、もう少し私が言えることも増えると思いますし、自分自身も成長できていると思います」
そして、新シーズンに向けてこんな決意も口にした。
「自分の国のサッカーと比べて、展開の早いサッカーをするという印象があります。慣れるまでに少し時間が必要かと思いますが、このスピードに慣れることに関しては、自信があります」
もちろん、ポジションは約束されているわけではない。笠原昂史や加藤有輝らとの競争に勝たねばならないが、サイズも経験も足元の技術も、そして謙虚でありながら、成長に貪欲な姿勢も、飛躍を予感させる。
最後に、パルチザン時代にともにプレーした浅野拓磨から日本について何か聞いているか、とたずねた。
「彼とはシーズン途中まで一緒にプレーしていました。彼はほとんど試合でプレーしていましたが、選手としても人としても素晴らしい存在でした。日本のこと? 彼はまだそんなに英語が得意ではなかったので、それほど深い話はできませんでしたが、いくつか日本の言葉を教えてもらいました。アリガトウ、オハヨウという言葉です」
新シーズンに臨むチームを最後尾から支える新守護神。笑顔で取材に対応しながらも、その目には常に自信がみなぎっていた。