上写真=まさに一丸の勝利!(写真◎J.LEAGUE)
「石川の◯ミリ」
ジェフ千葉が7試合ぶりとなる今季2勝目を挙げた。
ホームのフクダ電子アリーナにアビスパ福岡を迎えた第13節で、3-0と快勝。ともに下位に沈むチームの直接対決だから、立ち上がりから激しいバトルの連続だったが、25分、攻め上がった右サイドバックの前貴之のシュートが福岡のDFに当たってこぼれたところを好ポジションにいた姫野誠が蹴り込んだ。
福岡も反撃に出る。3-4-2-1から3-5-2にシステムを微調整して変え、さらに後半には塚原真也監督が「元に戻しつつ、両ウイングバックを高くして4-4-2のようにしてプレッシングをかけた」と説明したように、細かに立ち位置を変えてギアを上げてきた。だがいずれも、鈴木大輔を軸とした千葉のディフェンスが気迫ある守りを見せて対応。
すると65分、セットプレーを起点に安井拓也が左から上げたボールに、前が逆サイドから飛び込んでネットを揺らした。相手GKやポストにも当たりながら押し込む気迫のゴールだ。
2点のリードを奪い、誰の頭にも思い浮かんだのは前節のセレッソ大阪戦だろう。やはり2点を挙げてほとんど勝利を手にしながら、アディショナルタイムに入って2失点を浴びて引き分け、勝ち点2を失っている。
しかし、ここで守りに入るのではなく攻撃に目を向けた。前節の引き分けを踏まえて小林慶行監督は「(押し込まれる展開でも)自分たちがボールを持つ時間を増やしてゲームをコントロールしていけば、ああいう(C大阪戦のような)シチュエーションにもならずに済んだかもしれない」と伝えていたと言う。
その言葉どおり、アディショナルタイムに入っても途中出場選手を中心に、ボールを奪えば攻めに転じた。
90+5分にはボールを受けたホシャが左サイドへドリブル。相手のマークを受けながらも持ち込んで抜き切らずにクロスを送り込む。これを津久井匠海がシュートするがボールはゴールを外れてラインを割りかけた。ここに猛然と走り込んだのが、石川大地。ゴールラインぎりぎりから折り返すと、逆サイドで呉屋大翔がヘッドでたたいてゴール。
福岡の選手たちはボールがラインを越えたと主張するが、VARの検証の結果、得点が認められた。2022年カタール・ワールドカップでの「三笘の1ミリ」ならぬ「石川の○ミリ」で千葉がリードを3-0に広げた。そして、その直後にタイムアップの笛。
前節の苦しみがあって小林監督はサポーターの心情を思い涙をこらえ切れなかったが、サポーターの思いも同様だっただろう。前節の悪夢を払しょくする勝利だった。
1試合3ゴールは今季最多で、その3点目に絡んだのはすべて交代出場した選手であり、まさにチーム一丸の象徴になった。2点目を決めた前の気迫もチームを奮い立たせた。ここまでの苦い思い、修正すべきところを教訓とした前向きの姿勢がもたらした勝利と言えよう。
ただし、精神的な面を充実させただけでつかんだ勝利ではない。ここ数試合はプレーの内容が明らかに向上していた。第9節のV・ファーレン長崎戦、第10節の横浜F・マリノス戦はそれぞれ引き分けて勝利はつかめなかったが、確実にボールを動かしてチャンスも多く作った。だが、決めきれずに勝ち点を伸ばせなかった。
攻守に安定をもたらしたのは、インターナショナルマッウィークの中断をはさんで再開された長崎戦から、ボランチに安井とエドゥアルドのコンビが起用されたことが大きい。それまでこのポジションはマテウス・インディオと田口泰士、あるいは小林祐介が組むことが多かったが、安定しなかった。開幕後にC大阪から獲得した喜田陽がすぐに負傷して戦列を離れてしまったこともあり、試行錯誤の末にたどり着いたのが安井とエドゥアルドのコンビだった。
ともに実績のある選手ながら、なかなかレギュラーをつかむことができなかったが、ここで得たチャンスで好連係を見せ、攻守に躍動した。安井が視野の広さと冷静さを生かし、質の高い右足キックから好配球を見せて攻撃に変化を加えれば、エドゥアルドは豊富な運動量と素早い切り替えでボールを奪い、スペースに走り込んで活性化した。
中盤の中央が安定したことで、本来の強みである田中和樹、津久井、姫野らによるサイド攻撃もより効果的に繰り出せる回数が増えて、チャンスにつながっている。福岡戦でもシュート数で15対6と圧倒、何度も福岡ゴールに迫っていた。
「ここ数試合、良いゲームができていたというか、どちらに転ぶか分からないゲームを繰り返してきた中で、今日はしっかりと勝ち点3につなげられた。いくつもエラーを重ねてきたけれど、自分たちがやらなければいけないことを、リードしたあともしっかりとやれた。成長を見せられた」
小林監督も手ごたえを口にした。
とはいえ、残留争いをする順位の近い相手に勝ったに過ぎず、この日の勝利で18位に上がったとはいえ、次戦も一つ下の19位の水戸ホーリーホックとの対戦。だからこそ、連勝してチームの成長を証明したい。
さらに上位陣との対戦でも結果を残していかなければならない。この日見せたファイティングスピリットとコンパクトな陣形、素早い切り替えを維持して、活性化されてきた攻撃力をさらに高めていくことが残留への道になる。
文◎国吉好弘
