ワールドカップが終われば、日本ではJリーグがシーズン移行によって新しい時代に突入する。その「初代王者」を虎視眈々と狙うのがFC町田ゼルビアの中山雄太だ。自分たちを「勝負弱い」とする男の、ストレートな思い。

上写真=中山雄太は新シーズンでリーグVをつかみ取る強い思いを明かした(写真◎J.LEAGUE)

「何かを逃している」

──百年構想リーグは異例のハーフシーズンでした。選手の感覚としてはあっという間でしたか。

中山雄太 半年のシーズンではありましたが、1年間を戦ったような感覚に近いので、短かったと言える内容ではなかったです。単純に試合数が「割る2」ではなかったことと、試合の間隔が短過ぎたことで時間の流れが違いました。

──コンディション作りは、いつもと異なる工夫をされてきたのでしょうか。

中山 人間なので、慣れもあります。僕自身は18歳でプロになってから10年が経ったいまでも状態がいいというのは、連戦に慣れつつ、体を変えてきた成果でもあるかもしれません。僕自身はこれくらいのペースで試合があった方が性に合っています。

──結果的に百年構想リーグの地域リーグラウンドは、EASTで3位という結果でした(8勝2敗と、5度のPK戦勝利に3度のPK戦負け)。

中山 ACLEのファイナルズを戦ったことで、また出場権を獲得したいという欲も出ましたが、結局は達成することができませんでした。昨季は天皇杯を獲りましたが、昨季の優勝を逃した感覚にも近いハーフシーズンを過ごしました。

 周りからは年々町田は積み上がってきているものがあると見えているかもしれませんし、結果としても、23年のJ2優勝・J1昇格、24年のACLE出場権獲得、25年の天皇杯優勝、また26年はACLE初出場ながら2位という実績は残してきました。でも結局、天皇杯以外は何かを逃しているという感覚に近いです。

 僕個人としては、さすがに何らかのタイトルを獲っていかないといけないという危機感は強いです。年々チャンスがある中でも、結局はタイトルを獲れずに、周囲からは上位には食い込めるチームという漠然とした印象になっていると思います。26年も同様のシーズンを過ごしたという気持ちです。

──その一方で、常に上位に居続けるからこそ、タイトルに手が届くタイミングが訪れるという側面もあると思います。タイトル獲得への助走期間というよりも、タイトルを逃している感覚の方が強い、ということでしょうか。

中山 個人的な欲の強さが影響しているかもしれません。また表裏一体だと思いますが、優勝争いをしているからこそ、タイトルを逃したという感覚を得られるとは思います。

 ただ個人的に、町田は勝負弱いチームという自覚を持ち始めています。

 加入初年度の24年はケガの影響で欠場することが多かったですが、大事な試合で勝てないことはとても多いと思います。タイトルに近づけていると思えれば、ポジティブな結果ですが、タイトルにはもう一歩足りないということが多いです。

──他チームの選手たちからは「町田の勝負強さ」という言葉をよく聞きますから、勝負弱いチームという感覚は意外です。

中山 天皇杯は獲れましたが、リーグ戦で言えば、鹿島や広島との6ポイントゲームと言われる上位対決に勝ち切れている印象はあまり持てていません。実際にそういう試合では勝てていませんから。

攻撃で守る

──百年構想リーグを戦う中で、チームとしての幅が出てきたと思えるようなものはつかめましたか。

中山 これもいい部分と良くない部分が表裏一体で、ウノ・ゼロ(1-0)のような負けないサッカーはできるようになってきました。また百年構想リーグはPK戦勝利で勝ち点2を獲れるというレギュレーションだったので、勝ち点2を獲る割り切りも持っていました。でも、年間のリーグ戦として見れば、相当勝ち点を落としている結果になっていると思います。

──わずか2敗でも、90分を同点で終える試合が8つもあったことが心に引っ掛かると。

中山 それに加えて、僕らが必死に負け試合を追いつく展開ではなく、勝っている展開で追いつかれて、結果的に勝ち点2を失った試合が多かったという印象が残っています。

──2位のFC東京とは勝ち点で並んだものの、首位の鹿島の背中はずっと霞んだままでした。

中山 6ポイントゲームにあたる鹿島戦で敗戦とPK負けがあったことは大きかったです。特に国立競技場での鹿島戦は勝たなければならない状況で、開始早々の失点が響きました。僕らが抱えている、大事な試合で勝てないという課題が露呈した格好です。

──1巡目の対戦で失点が多かったことは、戦績が伸び悩んだ原因の一つになりました。

中山 これはシーズン中からずっと考えてきたことですが、町田は相手がボールを持っている時間帯で守り切る力はリーグでもトップクラスだと思います。ただ、プレーオフラウンド第1戦の名古屋戦で高嶺(朋樹)選手に決められた失点シーンのように、局面やあるワンシーンにおいて、相手が自分たちを超えてくることもある。

 そういったことが起こり得る可能性を減らすためにも、守備で守るのではなく、攻撃で守備をする時間を減らすことはやっぱり少ないですし、そのクオリティーはまだまだリーグで低い方だと認識しています。

 町田は守備にフォーカスする時間が多いですが、攻撃によって守備をする、あるいは攻撃によって守備の機会を減らすという概念がもっともっと浸透すると、失点はもっと減ってくると思います。また自分たちがボールを握れることで、自然と攻撃のチャンスが増えることにもつながっていくと思います。繰り返しになりますが、攻撃している中での守備完結がもっとうまくなればいいなと考えています。

何も成し得なかったシーズン

──ただこの百年構想リーグは昨季までと比較しても、アクチュアルプレーイングタイムがかなり伸びていることは大きな変化です。チームの幅を広げるという意味では、順調な階段を昇っているように映ります。

中山 このインタビューの中で話していることは、比較的課題や伸びしろの部分に目を向けていますが、もちろん積み上がっている部分もあると思います。ただ積み上がってきている中でも足りないものがあるからこそ、この順位になっています。

 もちろん、いいものはいいと受け止めつつも、そろそろ例年上位に食い込んでくるチームだなという印象を打破していきたいと考えると、ディテールの部分は早く突き詰めていきたいです。

──特に1巡目の対戦ではクロスからの失点が増えていました。これは記者の個人的な見解ですが、百年構想リーグは昇・降格がない影響か、ゴール前の粘り強さが影を潜めていた印象です。

中山 選手たちはそう思ってプレーはしていないため、無意識レベルの話になってしまうかもしれませんが、僕が思うに、仮に同点で90分を終えても、(PK戦勝利で)勝ち点2を獲れる可能性があることによって、緩さや慢心、あるいは何らかの油断につながる可能性はあったかなと思います。

 勝ち点3を取るために、リスクを冒して圧力を掛けていく試合があるとは思いますが、百年構想リーグでは引き分け(同点)でも、「まあ大丈夫だろう」という印象は、チーム内でもあったと思います。

──ホームでのFC東京戦は0-3の完敗でしたが、その敗戦を機にチームは90分無敗で駆け抜けました。FC東京戦の痛恨の敗戦が1つのターニングポイントになった印象です。

中山 ホームでのFC東京戦はACLEのリーグステージで唯一の敗戦を喫したメルボルン(シティFC)戦と似たような試合だったと記憶しています。ボールを奪ったあと、すぐにボールを失ってしまうシーンがとても多く見られました。

 確かにFC東京がとても良かったのですが、出ばなを挫かれても何もやらずに終わってしまった試合でした。

──ACLEのファイナルズを控えている中、痛い目に遭ったことで“転んでもタダでは起きない”チームの真髄を見た気がします。

中山 ホームでのFC東京戦は自分たちの力を出せずに負けたかというと決してそうではなく、本来持っている力を出せた上で負けたわけでもなく、やるべきことをやれずに負けた試合でもありました。だから、4日後のFC東京との再戦では原点回帰をした結果でした。

 課題への目線がだいぶ下の方にあったので、きちんとやろうと下から始めた中で結果がついてきました(0-0からPK戦4-2で勝利)。あの敗戦からズルズルと崩れてもおかしくないと思っていましたから、次の対戦相手がFC東京であったことも大きかったです。

──最終的には、名古屋とのプレーオフラウンドを2試合合計4-3で制して百年構想リーグを5位でフィニッシュしました。

中山 シーズンの目標で言えば、5位以内は最低限として掲げていたため、大目に見てセーフかなというラインですが、例年上位に食い込むチームという印象だけで終わりたくないと考えると、納得はいきません。ACLEに関しても、あと一歩のところで優勝を逃してサウジアラビアから帰ってきているため、結果だけを見れば、何も成し得なかったシーズンになったと思います。


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