上写真=荒木遼太郎は見事な先制アシストなど、存在感を発揮して日本一に(写真◎桜井ひとし)
■2025年12月6日 J1第38節(観衆:37,079人@メルスタ)
鹿島 2-1 横浜FM
得点:(鹿)レオ・セアラ2
(横)天野 純
「あれはシャペウ」
「本当にもう何にも変えられないぐらいうれしいですね」
ひとしきり喜んだあとだからか、ミックスゾーンでは淡々と優勝をかみ締めた荒木遼太郎。FC東京での1年の「修行」を終えて帰還した鹿島アントラーズで、ついに栄冠を手にした。
とはいえ、出場機会に恵まれてきたわけではない。出場時間806分はチームで17番目。それでも、優勝を決める最後の試合では先発の座を勝ち取った。
「やるべきこと、求められているものは理解した上で入りました。でもそれよりも、自分が今年1年間やってきたことをすべててぶつけようと思ってやりました」
レオ・セアラの近くでプレーして積極的に前に出て、20分の先制ゴールをアシストしてみせた。右サイドからの松村優太のマイナスのセンタリングをシュート、と思ったら当たりそこねたが、ボールがこぼれて浮いてきた。すかさずバイシクルキックで背中側に送ると、そこにはレオ・セアラ。
「あれはシャペウですよ」
相手の頭上を狙って抜くパスを「シャペウ」(ポルトガル語で帽子の意)と呼ぶが、「あれは自分でもだまされた」と言って笑わせた。
「もう中は見ずに上げました。でも、レオと(鈴木)優磨くんがあっちにいるのは分かってたので、あの2人なら何かしら決めてくれるかなと。本当に入って、でも1点入ったぐらいじゃ安心はできなかったですね」
レオ・セアラが右足で突き刺して、最高のスタートを切った。
57分にもレオ・セアラが決めて2-0として、荒木は今季最長タイの82分間プレーしてピッチをあとにした。その後に1点は失ったものの、2-1で逃げ切りに成功して、ついに優勝!
夏には6試合連続でベンチから外れることもあるなど、苦しい1年だった。だが、そんなときにもチームが勝つための行動を取った。
「あまりマイナスになり過ぎずに、試合に出たらやれると思っていたので。練習でもチームにマイナスなことを見せずにやり続けようと思って、常にポジティブに見せながら頑張ってきました」
鬼木達監督も荒木の成長を見守って、最終戦で起用して、称賛した。
「タロウも苦しい時期を過ごしたと思いますけど、このチームから離れることなく歯を食いしばってついて行ってやろうという感じがありました。今日は落ち着きをもたらしたかったのでタロウを入れましたし、調子のいい選手を長く使って前半で勝負を決めようと思いました」
そんな鬼木監督の下で、荒木が実感したのはメンタルのパワーアップ。
「我慢強さはやっぱりついたと思いますね。出られない時期もメンタル面が鍛えられたかな」
心の強さを手に入れて、最後に自らの活躍で優勝に貢献したシーズンの終わりに、背番号71のテクニシャンは一つ階段を登ったはずだ。
