上写真=試合後、サポーターの声を聞く堀米悠斗と早川史哉。苦しい思いを打ち明けた(写真◎J.LEAGUE)
■2025年11月8日 J1第36節(観衆:11,505人@レモンS)
湘南 5-2 新潟
得点:(湘)鈴木章斗2、平岡大陽、小野瀬康介、奥野耕平
(新)長谷川元希、マテウス・モラエス
「スプリントを繰り返せば気持ちは…」
一般に、改革は「よそ者」「若者」「バカ者」によって成し遂げられる、と言われる。アルビレックス新潟のキャプテン、堀米悠斗は、あえて「バカ者」になろうとしているのかもしれない。
11月8日の湘南ベルマーレ戦は、新潟にとってとても難解なゲームだった。
すでにJ2降格が決まった。相手は、同じく降格することになった湘南だ。向こうは19試合勝利がなく、こちらも17試合勝利なし。だが、新潟が勝てば入れ替わって最下位を脱出できる。
それが、終わってみれば2-5の大敗だ。
前半にミスから2連続ゴールを浴びて、後半にも3失点。終盤に2点は返したものの、勝利は遠く、堀米の表情は堅く重苦しいままだった。
3試合ぶりの先発となり、左サイドバックとしてポジショニングを細かく調整して準備したという。6月29日のFC町田ゼルビア戦以来のフル出場になったが、その効力は、5失点という現実の前でかき消されてしまった。
「僕たちからのSOSだととらえてほしいんですけど…」
堀米は背筋を伸ばして前を向いたまま、そう口を開いた。
試合後にゴール裏に向かい、「気持ちが見えない」とサポーターから投げかけられた切実な指摘を受け止めた。今季はずっと難しい時間を過ごし、だからこそ「キャプテン」として振る舞うべき場面は多岐にわたり、クラブと、スタッフと、サポーターと向き合う過剰なまでの重責を、悩みながらも一身に引き受けてきた。だからこそ口にできる思いである。
「例えば、スプリントを繰り返せば気持ちは伝わるのか。むやみに前にダッシュして背後のスペースをやられました、というのでは、気持ちは入っていたよね、とはならないと思うんですよ」
つまり、明確な理由のないスプリントが、サポーターに「気持ち」として伝わらないと理解しているのだ。それは偽物であって、彼らにウソをつくわけにはいかない。
ピッチの中で共通意識を鋭敏にして、連係して正しいポジションを取り、そこから攻撃を仕掛け、奪われても奪い返すことのできる場所に人が自然と配置されている。そういう全体像を描いて初めて、正しい距離で相手ボールにアタックできるし、効果的な裏抜けが可能になって、前へ前へとボールを運べて、つまり「気持ちが見える」という評価に値するゲームになっていく。
堀米は敗戦や降格の責任を、キャプテンとして誰よりも前に立って受け止めてきた。その現実があるからこそ、「気持ちを見せる」ためには、やみくもに駆け回るのではなく、戦い方の全体設計の精度をより細やかに、より高度に積み上げる意志を持っているのだ。
残りはもう2試合。降格も決まってしまっていて、それでも「気持ちは折れていない」とチームの思いも代弁し、戦い続ける意欲にあふれている。「SOS」という表現はもしかしたら刺激的かもしれないが、その言葉の向こう側に息づく思考を理解しようとする試みを放棄しては、真意にはたどり着けない。
入江徹監督が就任してからまだ一度も勝っていない。だから、戦い方の統一を図って、もう一度、勝利のために前を向く意志につなげようともがいている。残り試合の相手、柏レイソルとFC東京を相手に、「バカ者」としての姿を見せつけるしかない。
