サンフレッチェ広島が珍しくゴール欠乏症に喘いでいる。10月25日の明治安田J1リーグ第35節で横浜F・マリノスに0-3の敗戦を喫し、これで公式戦3戦ノーゴールだ。塩谷司が施した工夫と中村草太が見つけたヒントを、11月1日のJリーグYBCルヴァンカップ決勝に生かしたい。

上写真=東俊希(左)のセンタリングに中村草太(右)が合わせた66分の「幻のゴール」。そこにヒントが?(写真◎J.LEAGUE)

■2025年10月25日 J1第35節(観衆:27,356人@日産ス)
横浜FM 3-0 広島
得点:(横)植中朝日、天野純、ジェイソン・キニョーネス

「1回忘れるべき」

 サンフレッチェ広島が横浜F・マリノスに0-3というスコアで敗れた。3失点は今季のリーグ戦で初めてのこと。ノーゴールは公式戦で3試合も続いている。

「しっかり引いて守ってきた相手に対して、自分たちがどれだけ有効に崩すことができたか。非常に苦労する場面が多かったと思います」

 ミヒャエル・スキッベ監督の言葉を待つまでもなく、攻めあぐねた。監督は続ける。 

「オフェンス面であと1歩が足りないと思ってます。ボックスまではすごくいい形でできているけれど、そこから先の部分で突き詰めてやっていかなければ。ボックス内でどれだけいいプレーができるか、そこにこだわる必要がある」

 ボランチでプレーした塩谷司は、まさにその課題に直面している。

「もうずっとそれを聞かれるんです。点が点が、って言われるんですけど、僕も答えを知りたいです」

 もちろん、塩谷はさまざまに工夫をこらしていた。3バックの中央、山﨑大地の左にポジションを落としてビルドアップの起点になりつつ、3バックの左の佐々木翔と右のキム・ジュソンをサイドに開かせて押し出してもみた。あるいは中盤の中央をボランチのパートナーの川辺駿に任せ、一列前に出て相手のボランチに近づき、警戒心を引き出すことでポジショニングを撹乱したりした。

「後ろに落ちたときにシャドーの選手やさらにその前に入れるようにしましたけど、そこから先がなかった。マリノスさんが守備をはめに来ている中で、どうはがしていこうかと考えながらやってたんですけど、効果的だったかと言われたらどうなんだろう、と」

 塩谷が余裕を持ってボールを送り出せるタイミングと、前線の動き出しの一瞬やその種類がかみ合わなかった。ボールは回るがほぼ等距離で同じスピードのパスが続き、ボールも人もダイナミックな動きに欠けた。

 風穴を開けることができるとすれば、66分のプレーがきっかけになるだろうか。木下康介がポストプレーからターンして左のオープンスペースへ、走り込んだ東俊希が折り返し、中村草太が押し込んだ。後半から入った3人でつないだゴール。

 これは残念ながら、中村のポジションがオフサイドだったために認められなかった。しかし、中村にとっては「ゴールにはならなかったけれど、再現性のある形」と手応えのあるものになった。

「前向きにゴールに向かうプレーを続ければ、ああいう形が生まれると思う。その回数を増やしていかなければいけないですね。背後への動き出しがあったから逆サイドが空いていましたし、連動性というか、そういうヒントが出てきている。それをチームとしてもう1回全員が統一して、あとはチームのことばかりにならずに、個で打開できる力が必要かなと」

 チームのための背後へのラン。個で突破するアクション。塩谷が探し求める答えのヒントを、66分の幻のゴールで中村が見つけた。あとはこれを「本当の形」に仕上げるだけだ。

 柏レイソルと激突するルヴァンカップ決勝が、11月1日に待っている。

「今日の試合は1回忘れるべきだと僕は思うんです。本当にこんなひどい試合が決勝戦じゃなくてよかった。1回、気持ちを切り替えて、1週間でチームをいい状態に持っていく、ということだけ考えます」

 塩谷は危機感を高めた。ひどい試合の中で見つけたヒントをタイトルへと昇華させる1週間が始まった。


This article is a sponsored article by
''.