上写真=PKを止めた直後、西川周作は仲間たちからそのプレーを称えられた(写真◎J.LEAGUE)
■2025年10月4日 J1第33節(観衆:38,062人@埼玉ス)
浦和 1-0 神戸
得点:(浦)イサーク・キーセ・テリン
「究極の余裕を目指して」
浦和レッズがヴィッセル神戸から1-0の勝利をもぎ取った90分。あのプレーがなければ、浦和の凱歌は響くことはなかっただろう。
41分、GK西川周作のPKストップである。
酒井高徳に左サイド深くからセンタリングを送られるその瞬間、荻原拓也が立ちはだかった。しかし、勢いで手にボールが当たって、PKの判定になった。
西川はゴールの前に仁王立ちしながら、心は静かだったという。
「ルヴァンカップの川崎戦(準々決勝第2戦)でPKが2発あったんですけど、そのときのメンタル的なところを生かしました。あのときは『止めないといけない』と思ってしまった部分があって、今日は『PKは決められても当たり前』と余裕を持ちながらゴールマウスに立つことができました」
キッカーは宮代大聖。
「昨年のアウェーで宮代選手を止めているので、そういったところも僕の余裕につながったかなと思います」
自分でも珍しいと言うのだが、宮代の目に触れるように、左手を上下に動かしてみせた。
「相手に少しでもプレッシャーがかかればいいなと思って、あんまりああいうこともしないんですけど、自分の中では余裕があって、駆け引きしようかなという思いはありました」
そして、跳んだのは右。前回止めたのと同じ方向だ。だが、今回は宮代が逆に蹴ってくることも十分に考えられた。
「ストライカーは自分を強く持っている選手、自分を貫く選手が多いと思います。宮代選手の性格は分からないですけど、なんか同じところに蹴ってきそうな意志を感じて、冷静に分析して間合いを測っていました」
心に余裕があれば、駆け引きを能動的に仕掛けることができて、そうすることで相手を分析できる。その成果で、見事にストップしてみせた。
「(反応したのは)もう蹴る瞬間ですね。助走に入って最後の1歩のところで、しっかりと足を出せたことがセーブにつながったかな」
跳んだ高さもきっちりとコントロールされていた。
「上に跳ばずに、しっかりと水の流れるように体を持っていけたのは、日頃練習している成果が出たと思います」
その背後に心強いパワーを感じていた。
「(昨年よりも)今日のほうがいいコースではあったんですけど、しっかりとタイミングを見ながら最後までプレッシャーをかけることができましたし、これまでの経験だと、後ろに旗があったりプレッシャーをかけてくれるサポーターもいるので、非常に蹴りにくいんじゃないかな」
ともに守った「仲間」への感謝も忘れない。
このほかにも、例えば86分にカウンターを浴びて汰木康也にニアを射抜かれそうになったシュートも、しっかり足を残して左足でかき出すなど、余裕たっぷりのセービングを連発。これで3試合連続クリーンシート達成だ。
「究極の余裕はいつも追い求めてやっています。自分の中でもメンタル的に余裕があるときはいいプレーが自然とできているし、そういった状態になれるように日々練習していきたいと思います」
余裕を生み出すのは、やはり「練習」なのである。それをいまでも追い求めるからこそ、プロ22年目のシーズンでも試合ごとに進化を遂げているのだ。
